その理由は「屋根が○○になっているのが見えた」というのは全部ウソだからです。
そして彼らは、いくら親切そうに見えても、それは訪問販売が目的の違法行為です(又は違法ギリギリ)
そんな業者だと知って工事を依頼するというのなら止めませんが、適切な値段と工事をしたい場合には絶対にお勧めできません。
そんな、親切を装った点検商法が流行っていて、半信半疑ではあるものの沢山の方が点検で屋根に登らせるところまでは行っています。
その後のセールスがヘタな場合は「何かおかしいぞ…」と気付いて断る事もありますが、上手で親切なセールスマンに捕まってしまうと、高額な手抜き工事を依頼してしまいます。
そんな被害が一人でも減るキッカケになればと思い、この記事を書く事にしました。
※予算に余裕があり、心配なので自発的に修繕するのは良い事です。
この記事ではそれを止めようとしている訳では無く、営業マンに丸め込まれて工事をするのは良くないと伝えたいのです。

屋根の訪問業者が使う点検商法は「特定商取引法」の穴をすり抜ける

「これだけは守りたい販売事業者のルール」特定商取引法の正しい知識
これは、訪問販売を規制する「特定商取引法」の穴をすり抜けるために使われるテクニックです。
本来であれば、屋根の修理を勧誘する(=訪問販売を正規に行う)場合、下記の事業者の氏名等の明示をする義務があります、(特定商取引法 第3条)
勧誘に先立って、消費者に対して以下のことを告げなければなりません。
事業者の氏名(名称)
契約の締結について勧誘をする目的であること
販売しようとする商品(権利、役務)の種類
正直言ってこれを守っていたら訪問販売は出来ません。
(出来ないように法律を作ったのだから当然ですが…)
しかし、屋根の訪問業者は…
- 氏名を名乗らず
- 勧誘目的だと明かさず
- 屋根工事をさせようとするのは隠して…あなたに近づいてきます。
訪問業者は点検では無く「点検商法」で、ウソを付くことなく(違法行為ギリギリセーフの手口で)簡単にあなたを騙して屋根の工事を勧めます。
では、どんなテクニックであなたを誘導していくのでしょう?
訪問販売の業者が使う7つのセールステクニック

屋根の訪問販売業者は、マニュアルでもあるかのように同じセリフを言います。
そしてこのセリフには「訪問販売目的では無い」と言う心理操作が含まれています。
7つのセリフ全てに、見事なまで心理学を使ったセールステクニックが使われているのです。
ここまで聞いてしまうと、簡単に次のステップに誘導されてしまいます。
屋根の診断を「お願いさせる」点検商法のテクニック
それが親切な若い職人さんで「ほらほら、外に出て見て下さいよ」と言われたら、追い返される確率はかなり低くなります。
ついついあなたも家の外に誘い出されてしまうでしょう。
そして、ここから屋根の葺き替え工事を勧めるストーリーが始まります。
① 違和感に見えるだけの屋根の不具合
違和感が見える場所は、屋根の棟板金の隙間(浮き)


矢印の部分は肉眼ではもう少し大きめに見えるのですが、写真で拡大すると下記のように隙間が開いているように見えます。
この画像から隙間は後天的なものでは無く、新築の時から開いていたと思われます。
そして、ここが重要なポイントです。
この微かなスキマをどうしたら、ふいに見つける事が出来るでしょうか?
どう考えても、必死に見つけようとしない限り探せません!
ただ、実際に自宅の屋根の一部だけチョット浮いているのを「屋根屋さん」を名乗る人から指摘されて、その通りだった場合、やっぱりビックリしてしまうと思うのです。
ここは大切なので強調しておきます、どんな屋根でも必ず多少の違和感を探し出す事は出来ます。
②「あれの事かな?」
今度は特に何も見つけていない場所でが、にも関わらず「あそこです」と指をさします。
それには理由と勝算があるからです。
指をさされると、誰でもその先の屋根を見てついつい「あれの事かな?」と思う違和感を見つけ言葉に出してしまいます。
「そうそう、アレです!」と話が進んでしまうと、後は相手の思うツボ。
「あれの事かな?」と言わせるのが、ポイントです。
なぜなら実は、どんな屋根でもよく見ればチョットくらいの違和感があるものです。
業者が指をさしたのは「屋根全体」であって、特定の不具合場所ではありません。
③ 屋根の不具合が大袈裟に見える写真を撮る
たとえ地上から屋根の不具合が何も見えなくても「お宅の屋根がおかしい!」と断言して、宣言通り屋根の不具合を見つけるのです。
実は、重箱の隅をつつけばどんな屋根でも実際に登ってみれば、チョットくらいの不具合は探せるものだからです。
ただし、それはあくまで「重箱の隅」であり、障子の桟を指でなぞるようなモノ。
どの家にも必ずある事なのです。
しかし、屋根の事なのでその小さな事も必要以上に大変な事に感じてしまうし、感じさせるのが屋根の点検商法のテクニックなのです。
そして、巷で言われているような【自分で瓦を割る】とか【他の家の写真を見せる】なんて事は犯罪や詐欺なので、絶対にしません!!
そんな事をしなくても、重箱の隅は必ずあるからです。
では、どんな重箱の隅があるのか、これから具体例をお見せしましょう。
訪問販売の屋根業者が撮る写真の具体例
- 棟板金の釘が浮いているところ
- スレート屋根材のヒビ
- スレート屋根材の欠け・割れ
この3パターンが定番です。
これからお見せするその3パターンの写真は全部私が撮影したものです。
ですから「こんな風になっていても、大丈夫ですよ」という事例として撮影したものになります。
棟板金の釘

自然現象で浮いてしまうので、浮きの無い家は絶対ありません。
実際の屋根の釘の浮きの実例をここからお見せします。






この程度の浮きが有っても、屋根を全体の工事(葺き替え・カバー工法)の必要はありません。
下地材木の劣化の程度で、打ち込み直し・棟板金のみ交換といった工事で対応は十分です。
棟板金の交換については詳しい記事を書きましたのでこちらを見て下さい
屋根の欠け
屋根の割れや欠けも無い方が良いですが、必ずしも大騒ぎする事はありません。
スレート屋根は2枚重ねになっていて、上の屋根が無くなっても下記画像のように下の屋根材が有るからです。

この程度の端の欠けは大きな問題にはなりません。
1軒に1カ所くらいはほとんどの家にある割れ・欠けです。

この程度の欠けは、全く問題ありません。

やや大きめの欠けが2カ所あります。
このまま放っておくのは良くありません。
ただし、この屋根も塗装をする事で欠けの断面を塞ぎ表面を再コーティングすれば、約10年後の次の塗り替えまで特に支障なくいられます。
つまり、業者にそそのかされて全面改修をする必要はありません。
屋根のヒビ

このようなヒビも、必ず何本かはあります。
何もせずに放置していたのでは良くないですが、屋根を塗装する際に埋めて塗っておけば、次の塗り替えの時までは耐えられます。

ヒビはコーキングで埋めてから塗装を行います。
屋根を埋めた跡

こちらは具体的に屋根のヒビをコーキングで埋めた跡の画像です。
実はどの家にもこの程度のヒビが入っています。
三度、大切なので強調します。
このようにどんな屋根でも必ず不具合を探す事が出来ます。
基本的に屋根の棟板金が1本も浮いていない屋根はありませんし、ヒビの入っていない家もありません。
屋根に上る事さえ出来れば、必ずこのような素人さんがビックリする写真を撮る事が出来ます。
屋根から降りて来た営業マンが言うセリフ
上記の写真を撮って来た屋根営業マンが梯子から降りて来て以下のセリフを言います。
- 屋根の釘が抜け掛かっていて、すぐに修理をした方が良い
- このまま何もしないと次の台風で屋根が飛んでしまうかもしれない…
- 屋根が割れているので、放っておくと雨漏りしますよ
- この屋根はもう寿命だから葺き替えないとダメですね
- 今葺き替えておけば、後は半永久的に大丈夫になりますよ
…というわけでその場で直ぐに見積りを作るか、当日の夜に再度見積りをもってきて契約を急かされる、というストーリーです。
消費者センターや区役所からも同様の注意喚起が
屋根が雨漏りしたら大変なのですが、そこで屋根の点検を依頼をしたらもっと大変な事になってしまいます。
今回の記事の信頼性の担保として、各種行政機関からの注意喚起情報も掲載しておきます。
独立行政法人国民生活センター
千円のはずが20万円の工事に!?屋根工事の契約トラブル(見守り情報)_国民生活センター
「近所で工事をしているのであいさつに来た」と訪ねてきた男性から、「お宅の屋根の鬼瓦が傾いているのが気になっていた。隣の家に落ちると大変だ。今なら残っている漆くいを使って千円で直してあげる」と言われ、千円ですぐ直してもらえるなら、と修理をお願いした。作業終了後「瓦が浮いている。このままだと雨漏りするので屋根全体を工事したほうがいい」と言われ、雨漏りしたら大変だと慌ててしまい、約20万円の工事の契約をした。しかし、冷静になってみると契約を急ぎすぎたような気がする。クーリング・オフしたい。(60歳代 男性)
世田谷区
世田谷区発行の「せたがや消費生活センターだより12月号(220号)」にも下記の記事が掲載されています
「お宅の屋根を点検します」点検商法に注意!
2週間前、突然自宅に工事業者が来て、「近所で屋根工事をしているが、お宅の屋根もサービスで点検します。」と言うので、点検してもらった。
すると「ひどい状態だ、屋根が傷んでる。大雨が降ったら大変だから、すぐに修理したほうが良い。」と言われ、契約書を交わし工事を依頼した。
その後、同じ業者に次々と外壁工事、床下工事をすすめられ断りきれず合計750万円の契約をしてしまった。
世田谷区のホームページ【最新消費者被害情報と相談事例FAQ!】のページにも「お宅の屋根を点検します」~点検商法に注意!というファイルがあり、下記の内容が掲載されています。
数日前、近くで屋根工事を請け負っているという事業者が訪問してきて「お宅の屋根も点検します」と言うので、点検してもら
った。
すると「屋根が傷んでいて釘もでている。大雨が降ったら大変だから、すぐに修理したほうが良い。」と言われ、その場で55万
円の見積書を出された。
高額だと思ったが、「今請け負っているところもそのくらい」と言うので契約書を交わし、工事を依頼した。
以前に修理を依頼したことのある事業者にその話をしたら、「金額が高いし、そもそも工事の必要が無いのではないか」と言
われ不安になった。
工事は来週からの予定だが、今からでも解約できるだろうか。
東京都
東京くらしWEBというサイトには【処分事業者一覧】を公開しているページがあります。
屋根リフォームに関して違法行為を是正する措置として行政処分を受けた事例が載っています。
屋根リフォーム事業者に6か月の業務停止命令
消費者宅を突然訪問し、「瓦がずれていて危険。すぐに修理した方が良い。」などと嘘を告げて、屋根リフォーム工事契約等を勧誘していた事業者に対し、特定商取引に関する法律に基づき、6か月の業務の一部停止を命じるとともに、違反行為を是正するための措置を指示しました。あわせて代表取締役に対し、当該停止を命じた範囲の業務を新たに開始することの禁止を命じました。
高齢者に高額な屋根工事を一方的に迫る訪問販売業者に3か月の一部業務停止命令
東京都は、特定商取引に関する法律に基づき、「近所で工事をしています。お宅の屋根を見たら、気になったから、屋根を見ましょうか。」などと訪問し、屋根工事等に関して何も分からない消費者に対して、屋根の状態や補修方法など十分説明せず、消費者の意向を確認することもなく、一方的に高額な工事を勧誘していた事業者に対し3か月の業務の一部停止を命じました。
消費者の不安を煽り不要な工事を勧誘する屋根リフォーム事業者に業務停止命令(6か月)
東京都は、特定商取引に関する法律に基づき、突然消費者宅を訪問して屋根の不具合を指摘した後、嘘の点検結果を告げて消費者の不安を煽り、屋根リフォーム工事を勧誘していた事業者に、6か月の業務の一部停止を命じました。
なお、この事案は、東京都と神奈川県が連携して調査を行い、同時に処分を行ったものです。
東京都は、特定商取引に関する法律に基づき、「瓦を止めている板がポロポロになっている。」、「早急に補修する必要がある。」などと事実と異なることを告げて、屋根リフォーム工事を勧誘していた事業者に対し、3か月の業務の一部停止を命じました。
東京都は、特定商取引に関する法律に基づき、消費者宅を突然訪問し「瓦がずれて雨漏りがする。」などと事実と異なることを告げて、屋根リフォーム工事等を勧誘していた事業者に、6か月の業務の一部停止を命じました。
なお、この事案は、都と神奈川県が連携して調査を行い、同時に処分を行ったものです。
屋根の訪問販売業者の点検商法に騙されないために
屋根の訪問販売業者の点検商法に騙されないために、消費者保護と健全な市場形成の観点から出来たのが【特定商取引法】です。
最後に特定商取引法の規制対象となる「訪問販売」について概要を解説しておきます。
訪問販売とは
一般的な訪問販売は、消費者の住居をセールスマンが訪問して契約を行うなどの販売方法です。
営利の意思の有無については、その者の意思にかかわらず、客観的に判断されることになるので、「親方に…」や「近くで工事をしていて…」などという方便は通用しません。
訪問販売に対する規制
訪問販売を行う場合は消費者に対して下記のことを言う義務があります。
- 会社名称(例:●●リフォームです)
- 契約を目的とした勧誘であること(例:屋根の工事をセールスしに廻っています)
- 工事の内容(例:屋根のカバー工法という工事です)
訪問販売を行うときには、先ず勧誘を受ける意思があることを確認するよう努める。
消費者が拒否したときは、そのまま勧誘を続けてはいけない。
また、その後改めて勧誘することも禁止。
クーリング・オフ制度
ただし、業者が威迫をして契約させて消費者が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合は8日以上経過後でもクーリング・オフができます。
注意)商品を使って無くなってしまった場合や3,000円未満の場合は対象外です。
本当に屋根が危険な場合、業者だったらどうするか?
正直言って、年間200件以上の屋根や外壁の見積り診断をして屋根に登っていると、大きな屋根の不具合なら2軒先程度までは見えます。
つまり「近所で工事をしている」という場合は、すぐそこで工事をしていて、音くらいは聞こえ、歩いて30秒くらいの所が現場でないとウソになります。
また、「屋根の釘の浮きが(肉眼で)見える」場合には、すぐ隣の家の屋根からでないと見えません。
そして、実際にすぐ隣の家で屋根に不具合が有るのを見つけてしまった場合の業者の対応は2つに分かれます。
- 訪問販売業者やそれに近い営業方針の業者の場合:バッチリ写真を撮ってセールスに来ます。
- 真面目でキチンとした業者の場合:自分が訪問系のセールス業者だと疑われたく無いので、直接報告はしません。 工事をしている施主伝いに伝達してもらうようにして、他社で工事をしてもらうように勧める可能性もあります。
優良業者が隣の工事をしない理由
なぜなら確かな業者(優良業者)なら、次の現場が待っているので突然お隣の屋根工事を依頼されてもスグには出来ないからです。
まして、屋根業者はもちろん、リフォーム業者の業界ではこのような悪質な業者が蔓延している事が分かっているので、間違ってもそんな業者と疑われたく無いのです。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事では下記の点についてまとめてみました。
この記事の内容が腑に落ちて早めに今の悩みが解決すると嬉しいです。
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この記事が役に立って、外壁塗装が上手く行えるようになったら嬉しいです。