FRPの再防水が必要な4つの症状と施工方法9工程の具体例

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FRPの再防水が必要な4つの症状と施工方法9工程の具体例

この記事では、バルコニーFRP防水の【全面再防水が必要な状況の例】と【工事を行う方法の具体例】についてお伝えします。

バルコニーのFRP防水は劣化の状態に応じたメンテナンスの方法が下記の6パターンあり、症状による対策が全く違います

この劣化の判断を間違えると適切なメンテナンスができません。
ですから、どんな工事をしたら良いのかを決める「現状の判断を適切に行えるか」?がとても重要になるのです。


今回の記事は下記4番目の項目剥がれが多い場合:【ベニヤ下地+FRP防水の全面やり直し】なります。

FRPの劣化のパターン
  1. 劣化が少なく補修不要の場合 :トップコートの塗り替え塗装工事
  2. キツネ色の剥がれが少しある :部分的な補修とトップコートの塗り替え
  3. グレーの剥がれがある場合  :何もしない・FRPの全面やり直し・DIY塗装
  4. 剥がれが多い場合      :【ベニヤ下地+FRP防水の全面やり直し】
  5. ベニヤが貼れない全面改修  :【FRP防水のみの全面やり直し】
  6. 雨漏りなどの改修を含む工事 :【それぞれの目的に合わせた工事】

では、
前半では【FRP防水の全面やり直し工事が必要な4つの劣化状態】を、
後半で【FRP防水の全面やり直し工事の9工程】を解説します。

目次

FRP防水の全面やり直し工事が必要な【4つの症状】

最初の手順は【劣化状況の診断】です。

全面的なFRP防水のやり直しが必要ながメンテナンスの内容になります。

全面やり直しが適しているFRPの防水の4つの症状
  1. 防水面に穴が開いている
    (床面から雨漏りしている)
  2. 防水面の剥がれが多い
  3. 防水面に大きなヒビが入っている
    (雨漏りしそう)
  4. 防水面に浮いている所が有る

上記の条件が当てはまっていたら、バルコニー防水の再防水が必要です。
プロを呼んで、診断の依頼と見積りを取る準備をしましょう。

では工事の方法について工程順に解説します。

FRP防水の全面改修が必要な劣化の4つのパターンを紹介します。

① 防水面に穴が開いている場合(床面から雨漏りしている)

FRPの防水層に穴が開いて雨漏りしているFRP防水の床

FRPの防水層に穴が開いて雨漏りしている

防水面に穴が開いてしまった場合、補修で済ます訳にはいきません
余程の衝撃が無いとFRPには穴は開きませんが、下記のような事も実際に起きています。

防水面に穴が開いているパターン
  1. 下地の不具合で出来た穴
  2. 台風などで何か飛んできて当たった衝撃で出来た穴

それぞれ画像で解説しましょう

①-1 下地の釘が浮いて出来た穴
FRP下地の【釘】が浮いて飛び出し、穴が開いている状態のFRP防水床面

FRP防水の表面から下地の【釘】が浮いて飛び出して、防水層に穴が開いている(雨が漏っている)

②-2 何かが当たって出来た穴
台風の時に「何か」が飛んできて破損した後、雨漏りになったFRP防水床面

台風の時に「何か」が飛んできて破損した後、雨漏りになった

② FRPの表面に剥がれが沢山ある場合

FRP防水に全面的に剥がれがあり、補修では済まない場合は、下記の2種類に分けます。
(今後2030年頃までこのパターンの不具合が増える傾向にあります)

FRPの表面に剥がれが沢山ある
  1. 大きい面積の剥がれと細かく広い面積の剥がれがある
  2. 床面も立ち上がり面も剥がれている

下記の画像を目安に剥がれの量を踏まえ、トップコートの塗り替えで良いのか・全面防水の方が良いのか、を検討しましょう。

②-1 大面積の剥がれ・細かく広い剥がれ
大きい面積の剥がれと細かく広い面積の剥がれがあるFRP防水の劣化

大きい面積の剥がれが1箇所・中くらいの剥がれが2カ所・細かく広い面積の剥がれもあります。

細かく広い面積の剥がれが有るFRPの劣化

細かく広い面積の剥がれはこのように剥がれています。

大きい面積の剥がれが有るFRP防水の劣化

大きい面積の剥がれ


このように剥がれてしまう理由は、新設時の施工不良(失敗)です。
そして、このように広範囲に剥がれていると、この上に何を塗っても下地から剥がれてしまいます。
ベニヤを張る事で下地との縁が切れるので、確実な防水層を作り直す事が出来ます。

②-2 床面も立ち上がり面も剥がれている
床面も立ち上がり面も著しく剥がれているFRP防水の劣化

床面に剥がれがあり、立ち上がり面にも剥がれがあるバルコニー。
工事開始前は剥がれていない部分もあり、汚れている部分が黒く見えますが…

高圧洗浄で汚れが落ちると下地のキツネ色が見えるFRP防水の劣化

立ち上がり部分のみ外壁塗装の高圧洗浄で洗うと、綺麗なキツネ色の防水下地が現れます。
床面だけでなく立ち上がりにも激しく剥がれがある場合、立ち上がり面にはベニヤが張れません。
立ち上がり部分は研磨とガラスマットによる防水層の新設となります。

床面も立ち上がり面も剥がれているFRP防水の劣化

床面も立ち上がり面も剥がれている


このようにバルコニー防水のグレーの塗装面(トップコート)が剥がれる事例が後を絶ちません。
その原因は新築時の施工不良(工事の失敗)です。
築年数が10年未満の場合は、建築会社に問い合わせをしてみると良いでしょう。

③ FRPの防水面に大きなヒビが入っている場合

FRP防水にヒビが入っているように見える場合、下記の2種類のヒビに分けます。

大きなヒビが入っている
  1. 下地のベニヤからヒビが入っている場合 雨漏りの危険が非常に高く、すぐに全面防水が必要です。
  2. 表面のトップコートにヒビが入っている場合 すぐに雨漏りする訳ではありませんので、じっくり考える余裕は持てます。
③-1 下地のベニヤからヒビが入っている場合
下地ベニヤの継ぎ目から入っているFRP防水の亀裂

防水のヒビ割れでは無く、下地ベニヤの張り合わせ継ぎ目が開いています。
ヒビの上からコーキングで補修されていましたが、ほとんど意味が無く切れています。
雨漏りはしていないもののかなり危険な状況でしたした。

下地ベニヤの継ぎ目から入っている亀裂

同じ建物で他の場所にも下地ベニヤの継ぎ目から入っている亀裂がありました

床の下地が開いてしまう原因は、建物の構造・大工さんの施工技術・地震・道路や線路などの揺れがあります。
特に木造3階建ての家では揺れが大きくなりがちです。
また、屋上のルーフバルコニーは広く作る事が出来るので、床下地を張り合わせて下地が割れる場所も多くなる危険も多くなります。

③-2 表面のトップコートにヒビが入っている場合
表面がバリバリに割れているFRP防水の劣化

FRPの表面がこんなにバリバリに割れていると、補修では収めきれません。
ベニヤを敷いて現下地との縁を切ってしまわないと、段差も激しく出てしまいます。

FRPのトップコートは厚く塗り過ぎると後で剥がれる

FRPのトップコートは厚く塗り過ぎると後で剥がれる

このように剥がれてしまう原因は、FRPのトップコートを厚く塗り過ぎた為です。
慣れていない職人は、FRP防水のトップコートも分厚く塗っておいた方が防水効果が出るだろうと思ってしまうのでしょう。

必要以上の厚みで塗って剥がれてしまう事例は結構よくあります。

④  防水面に浮いている所が有る

④ 防水面に浮いている所が有る
防水層が下地から浮いているFRP防水

防水面の浮きは写真では分かり辛いですが、押さえると動くので分かります。

防水面の「浮き」は上記の剥がれとはまた違う不具合です。
剥がれは、防水層とトップコートの剥がれですが、浮きはベニヤ下地と防水層の剥がれになります。

大雑把に言ってしまえば、防水層がベニヤと接着していなくても雨漏りはしない理屈です。
しかし、防水の不具合には違いありません。

根本的にその浮きを直す事は出来ないので、この場合もベニヤを張り直すところから再生させる必要があります。

【小まとめ】FRP防水の全面やり直し工事が必要な4つの劣化状態

ここまでが「全面やり直しが必要なFRP防水の劣化の状態です」

バルコニーFRP防水が上記のような状態ならば、この下の工事が必要になります。

FRP防水の全面やり直し工事の9工程

ではここからはFRP防水の全面やり直し工事の解説です。
やり直し工事の手順は以下の9工程です。

FRP防水の全面やり直し工事の8工程
  1. 床面の新規ベニヤ張り
  2. 立ち上がり部分の電動グラインダーを使って表面の目荒らし
  3. 面取り、コーナー材取付け
  4. プライマー塗装
  5. パテ処理
  6. 【立ち上がり部】ガラスマット張り+FRP防水主材+脱泡処理
  7. 【床面】ガラスマット張り
  8. FRP防水主材+脱泡処理
  9. トップコート塗装

順番に解説していきます。

①・床面:新規ベニヤ張り

工事の最初はベニヤ張りからです。

①-1 ベニヤの張り方
FRP防水のベニヤの張り方

ベニヤを張る場所
排水口の手前にはベニヤを張りません

FRP防水のベニヤの張り方

排水口にはこの後で「改修ドレン」を付けます。
改修ドレンの厚み分が高くなってしまうので、排水口の手前はベニヤを張らないのです。

①-2 ベニヤ張り作業の様子
新規FRP防水下地のベニヤ張り工事


新規FRP防水下地のベニヤ張り工事

床全面にベニヤを張る

ベニヤを張ってしまう事で、それまでの防水がどのように劣化していても縁が切れて関係が無くなってしまいます。

②・電動グラインダーによるFRP表面研磨・目荒らし(ケレン)

電動グラインダーなどを使い今のFRP防水の表面を【研磨・目荒らし(ケレン)】していきます。

グラインダーによるFRP表面研磨
電動グラインタ゛ーによるFRP表面研磨・目荒らし(ケレン)

③・面取り、コーナー材取付け

面取り
各ベニヤの段差の解消

側溝部分にはベニヤの直角部分が出るため、端を少し削って丸みを付けます。

面取り

ベニヤを敷いた時のそれぞれの段差を解消するために合わせ目を削ります。

コーナー材取付け
コーナー材をタッカーで取り付ける防水職人

ガラスマットを敷いていく時に隅が直角だと隙間が出来たり浮きやすいので、立ち上がり部分にはコーナー材を取り付けて角度を緩やかにします。

ここまででFRP防水の下地が完成
後は塗装の工程です。

FRP防水の下地作り

ここまででFRP防水の下地が完成です

④・プライマー塗装

いよいよ塗装の工程です。
専用のプライマーを塗っていきます。

FRP防水のプライマー塗装

FRP防水のプライマー塗装。
ベニヤと立ち上がりの両方を塗ります。

FRP防水のプライマー塗装

ここからの作業では床に足場やエアコン室外機が載っていては出来ないので、空中に浮かせておきます。

⑤・パテ処理

ベニヤの継ぎ目や各隙間をパテで埋めます

パテ処理
防水のパテ処理

プライマーがよく乾いてから、パテ処理をしていきます。

FRP防水のコーナー段差解消パテ処理

コーナー材が入らない部分の角度も緩やかにする為に、パテ処理もします。

⑥・ガラスマットのカット

ガラスマットをそれぞれの場所のサイズに合わせてカットします。

ガラスマットのカット
ガラスマット(ロール)

マットは幅1m程度のロール状になっています。

FRP防水のガラスマットの裁断

FRP防水のガラスマットの立ち上がり部分から裁断していきます。

立ち上がりのガラスマットを裁断

それぞれのマットは重ねて張っていくので、あまり大きなサイズにはしません。

【参考資料】

FRP防水主材の作り方

FRP防水 主材の作り方

アイカ工業:ジョリエースJE-2000L(軟質不飽和ポリエステル樹脂)に硬化剤(パーメック)を1/100入れて作ります。

⑦・【立ち上がり】ガラスマット張り・FRP防水主材塗装・脱泡処理

FRP防水主材を塗る
ジョリエース主材を先に塗る

立ち上がり部分は、マットが貼り付きやすいように、先に防水主材(ジョリエース)を塗っておきます。

ガラスマットを貼りつける
ガラスマットを貼りつける

ジョリエースに貼りつけるようにすれば、ガラスマットを簡単に付けられます。

再度防水主材を塗りガラスマットに含浸させる
再度ジョリエースを塗りガラスマットに浸み込ませる

ガラスマットの上からジョリエースをたっぷり塗り付けます。

脱泡処理
FRP防水の脱泡処理


脱泡処理とは、ガラスマットの中に入っている空気を抜く作業です。
平らなローラーだとマットにくっ付いてしまうので、ねじ山状になった専用ローラー(ネジローラー)で押さえて空気を出します。

⑧・【床面】ガラスマット張り+FRP防水主材+脱泡処理

床面は特に最初にジョリエースを塗る必要が無いので、マットを敷いた上からジョリエースを塗って行きます。

FRP防水床面のガラスマット敷き
FRP防水床面のガラスマット敷き

ガラスマットを1m×1m程度の大きさで切る理由は、長くすると脱泡時にマットが延びて綺麗に張れないため。

防水主材を塗りガラスマットに浸み込ませる
床面のジョリエース塗り

ガラスマットにジョリエースを塗って含浸させます。

【参考資料】

ジョリエースの含浸塗装前・脱泡処理後

ジョリエースの含浸塗装前・脱泡処理後

ガラスだけあって、ジョリエースが浸み込んでいくと、白さが無くなり透明になってしまいます。

脱泡処理
FRP防水床面の脱泡処理

立ち上がりと同様、脱泡処理で空気を抜いていきます。
( FRPの塗料はどれも速乾性です)

ジョリエース等のFRP防水主材(軟質不飽和ポリエステル樹脂)も同様で、脱泡処理にもたついていると乾き始めてしまいます。

⑨・FRP防水のトップコート塗装

脱泡処理が終わり材料や道具の後片付けをしているうちに、ジョリエースは乾いてしまいます。

塗装の場合は「良く乾いてから塗装する」と言うように塗装間隔をしっかり取るように言われますが、FRP防水の場合は逆です。

FRP防水は出来るだけ当日のうちにトップコート塗装を行う方が良く、時間を空けると良くありません。
よくあるトップコートの剥がれは、下地との塗装間隔を空けてしまった事による事が多くの原因です。

FRP防水のトップコート塗装
FRP防水のトップコート塗装

トップコートの塗装はあっという間ですし、すぐに乾きます。

FRP防水再工事 排水口の段差の完成

排水口部分の段差はこのように水が流れるようになりました。

トップコート塗装

これで完成です。

ベニヤ下地とFRP防水の全面やり直し【完成】

ベニヤ下地とFRP防水の全面やり直し 工事費用の相場

FRP防水のベニヤ下地を張り、防水主材からやり直してトップコート塗装をする工事が完成しました。

この工事の費用の相場については以下の通りです。

単価表(例)

工事内容数量単価小計
・現状診断経費130,000円
・床面:ベニヤ張り1平米10,000円
・立ち上がり:表面研磨1平米5,000円
・面取り
・コーナー材取付け
15,000円
・プライマー
・パテ処理
1平米5,000円
・ガラスマット張り
・防水主材含浸
・脱泡処理
1平米10,000円
・トップコート塗装1平米5,000円
・諸経費120,000円

費用の算出例① ルーフバルコニー

例えばルーフバルコニーの縦横の床の長さが各3m程度で、立ち上がりが30センチの場合は下記のようになります。

ベニヤ下地とFRP防水の全面やり直し【費用の相場例】
工事内容数量単価小計
・現状診断経費130,000円30,000円
・床面
ベニヤ張り
9平米10,000円90,000円
・立ち上がり
表面研磨
2.7平米5,000円13,500円
・面取り
・コーナー材取付け
15,000円5,000円
・プライマー
・パテ処理
11.7平米5,000円58,500円
・ガラスマット張り
・防水主材含浸
・脱泡処理
11.7平米10,000円117,000円
・トップコート塗装11.7平米5,000円58,500円
・諸経費120,000円20,000
税抜き合計392,500円
消費税(10%)39,250円
合計431,750円

費用の算出例② 一般的なバルコニー

例えば一般的なバルコニーで、奥行き90センチ・幅3.6m、立ち上がりが10センチの場合は下記のようになります。

一般的なバルコニーのベニヤ下地とFRP防水の全面やり直し【費用の相場例】
工事内容数量単価小計
・現状診断経費130,000円30,000円
・床面
ベニヤ張り
3.24平米10,000円3,240円
・立ち上がり
表面研磨
0.9平米5,000円4,500円
・面取り
・コーナー材取付け
15,000円5,000円
・プライマー
・パテ処理
4.14平米5,000円20,700円
・ガラスマット張り
・防水主材含浸
・脱泡処理
4.14平米10,000円41,400円
・トップコート塗装4.14平米5,000円20,700円
・諸経費120,000円20,000
税抜き合計145,540円
消費税(10%)14,554円
合計160,094円

バルコニーFRP防水のメンテナンス まとめ

今回の工事は一番大掛かりな「ベニヤ下地とFRP防水の全面やり直し工事」です。

この工事のように、防水面に著しい剥がれや劣化がある場合には9つの工程が必要です。

この工程の中でのポイントは「ベニヤ張り」です。
防水をする時に、ベニヤを張ってから防水をする業者はあまりいないかもしれません。

一般的には、今の防水面に直接ガラスマットを張る方が多いからです。
しかし、全面的な再防水の場合は床にベニヤを張ってから防水を行うのがコツになります。

※例外:床の立ち上がりが無くベニヤを張れない場合。

この記事の内容で納得が出来て、全面やり直し工事を選ぶ事が出来たら嬉しいです。

興味がありましたら、他の【FRP防水】関連の記事も読んで頂けると有りがたいです。

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この記事を書いた人

高橋良一のアバター 高橋良一 花まるリフォーム株式会社代表

塗装職人の2代目・職人15年・外装会社経営20年。塗料や塗装の知識・業者選び等…正しい情報を分かりやすく発信します。このサイトの目標は「誰もが適切な診断と良い工事が出来るようになる事」

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