外装仕上げ塗材という名前は専門用語なので聞き慣れないと思います。
分かりやすく言いかえると…
外装仕上げ塗材=今の外壁に塗ってある下地のことです。
塗料選びより大事というのは不思議に感じるかもしれませんが、下地が大事と言い替えると分かりやすいでしょうか?
外壁の塗り替えの場合の下地に関しては新築塗装の下地とは違います。
塗替えでは外壁素材では無く、塗装の上に塗るわけです。
ですから、その下地は、今表面に塗ってある【塗料】又は【外装仕上げ塗材】のどちらかになります。
外壁の塗替えをする時に、最初にポイントとなるのは、その「塗装をする下地は何なのか?」ということ。
この外装仕上げ塗材の種類と特徴が分かっていないと、その上に塗る塗料選びを間違ってしてしまう事が多く、注意が必要なので、この記事を書く事にしました。
家の外壁には何らかの凹凸模様が付いている事が多いですね。
その凹凸模様を形成しているのは「塗料=ペンキ」では無く、今回解説する【外装仕上げ塗材】です。
外装仕上げ塗材とは
外壁塗り替えの下地が【外装仕上げ塗材塗料】の場合
モルタル外壁を塗り替える場合は、塗装の下地は【外装仕上げ塗材】です。
ですから、モルタル外壁の外壁塗り替えを検討されている方は、この記事の内容が直接役立ちます。
モルタル外壁の見た目は以下の画像を参考にご確認下さい。
リシン吹き付け
吹き付けタイル
外壁塗り替えの下地が【サイディング】の場合
サイディング外壁の見た目は、以下の画像で確認して下さい。
サイディング外壁・クリヤー塗装
サイディング外壁・単色塗装
外装仕上げ塗材の特徴
立体的に凹凸模様を造る
一般塗料の厚みが数0.06mm(!)程度の液状であるのに対して、仕上塗材の厚みは3mm~10mm 程度になるので凹凸模様が出来るのです。
食べ物に例えてみると、クレープとお好み焼きの違い…で分かるでしょうか?
色の付いている材料と、色は別に塗る材料がある
「外装仕上げ塗材」が分かりにくい要因がここかもしれません。
外装仕上げ塗材には、色が練り込んである材料と色は後で乗せる(塗る)材料があります。
- 色が付いている外装仕上げ塗材は、工場で最初から着色して出荷される
- 着色と凹凸模様を同時に行うことが出来る
- 艶消し
- 透湿性がある(撥水性・防水性は弱く、雨水を吸って出す=呼吸型外壁になる
- 色が付いていない外装仕上げ塗材は、凹凸模様を付けることだけを担当する
- 着色は別途【外装仕上材(上塗り)】で行う
- 艶は【外装仕上材(上塗り)】の仕様で決まる
- 防水性がある(透湿性は弱く、雨水は上塗り塗料で弾く=防水型外壁になる
また食べ物に例えますが…お餅に例えると、最初から味が練り込んである「よもぎ餅」と白い餅にお好みで「あんこ」や「きな粉」で味付けする…そんな感じです。
外装仕上げ塗材を施工する目的・役割
- 美観の向上…建物外壁のデザインを決定付ける要素として重要な役割があります
- 下地の保護…モルタル外壁と上塗りとの間で一層厚みを付ける事で、外壁下地まで劣化しにくくする役割
- ヒビ割れ耐性…モルタル外壁から必ず入るヒビ割れを表面外壁まで入りにくくする「厚み」を増す役割
- 下地の不陸感の軽減…モルタル下地は完全に平面に出来ないので、外装仕上げ塗材の細かい凹凸を付ける事により、壁全体の大きな凹凸ムラが分からなくなる効果があります
極端な話、モルタル外壁に外装仕上げ塗材を施工しなくても「フラット仕上げ」で上塗りを塗っても構いません。
しかし、その場合は…モルタル面の凹凸が目立ち、ヒビ割れも入りやすくなります。
私の経験上、外装仕上げ塗材に厚みが付いている外壁にはヒビがあまり入っていません。
外装仕上げ材の厚みによってかなりヒビが食い止められている事が分かります。
主な使用道具
- ローラー
- 左官こて
- 吹き付け(ガン吹き)
主な模様(パターン・テクスチャー)
- 凹凸模様
- ヘッド押さえ模様
- ゆず肌模様
- 石材調
- リシン
- 各種パターン
主な材質
- セメント
- 合成樹脂などの結合材
- 顔料
- 骨材
外装仕上げ塗材の工事の手順概要
下塗り・主材塗り・上塗りの3工程が基本です。
下塗り
上塗り塗料が透湿性の場合には、浸透性シーラーを塗ります。
上塗り塗料が雨水を弾く(造膜型)の場合は、各種シーラー+フィーラーを塗ります。
主材塗り
吹き付け・ローラー・コテ・ヘラなどで平らな下地に立体的な凹凸模様を「手作業で」付けていきます。
ここは、まさに職人技と言える部分です。
ランダムな模様の場合は均一にパターンが繰り返されると、かえっておかしく見えます。
反面、複雑な模様が均一に続くパターンもあり、手作業で模様を造っていく技術には感嘆させられます。
主に色付きの主材の場合は、透湿性のある艶消し砂粒状の仕上で、この工程で外装塗り工事は終わりです。
白い主材の場合は、この後の上塗りの工程に進みます。
上塗り
吹き付け・ローラー・刷毛を使い、主に2回塗るのが基本です。
上塗りを塗る場合は、雨水を浸透させない目的で表面の被膜を作ります。
外装仕上げ塗材の分類
外装仕上げ塗材には大別して6種類に分けることが出来ます。
- 複層仕上げ塗材(硬質)
- 複層仕上げ塗材(弾性)
- 単層弾性塗材
- 外装用薄付仕上げ塗材
- 外装用厚付仕上げ塗材
- 装飾仕上塗材
複層仕上げ塗材(硬質)
複層仕上げ塗材(硬質)は下塗り・主材・上塗りの3層構成で仕上げ、主材・上塗りの2層は硬質材を使います。
(下塗りは硬質又は微弾性塗料を使う)
複層仕上げ塗材(弾性)
新築時に外壁のヒビ割れがどうしても心配な場合や、新築後に外壁に激しくヒビが入ってしまった場合や外壁から雨漏りしている場合の対策には、この弾性型の外装仕上げ塗材を使う事が多いでしょう。
複層仕上げ塗材(弾性)も下塗り・主材・上塗りの3層構成で仕上げ、主材・上塗りの2層で弾性材を使います。
(下塗りは硬質又は微弾性塗料を使う)
複層仕上げ塗材(弾性)には、一般形の弾性塗材(木造用)と、防水型の弾性塗材(鉄筋コンクリート用)の2種類のグレードがあります。
- 一般型弾性塗材(木造用)はJIS規格の【JIS A 6909 防水形複層塗材E】という仕様で、一般的な弾性ゴム系の外壁塗材です
- 複層仕上げ塗材に弾力性を加えたものですが、防水性や弾力性の維持はやや弱く、弾力性は次第に低下していくこともあります。(条件・状況による)
※ 本来、モルタル外壁の表面で「防水」をする必要が無いため【JIS A 6909 防水形複層塗材E】は「弾性」ではありますが「防水」とは呼べません。
- 防水型(鉄筋コンクリート用)はJIS規格の【JIS A 6021 建築用塗膜防水材】という仕様で、主に鉄筋コンクリート造建築物の外壁の防水工事に用いる塗膜防水材です
- 屋上用の塗膜防水材を外壁仕様にしたもので、外壁に塗る防水材と言う意味で「建築用塗膜防水材」と言って良いのはこの仕様だけです
※ 国家基準上で「防水仕様」と呼んで良いのはこの仕様だけです。
単層弾性塗材
単層弾性は省力化用の材料
複層は層が2回・単層は層が1回なので、単層の方が塗装の回数を1回少なく出来るのです。
現場の状況や都合で、どうしても弾性仕様にしたい場所で「工事を最短1日で終わらせたい」
そんな現場用途にピッタリなのが…単層弾性塗材です。
単層弾性塗材だと、どの部分が省略できるの?
複層弾性塗材と単層弾性塗材の工事の進み(工程)の違いを表にしてみました。
複層弾性塗材の工程
工程 | 作業内容 | 塗り回数 | 塗り重ね乾燥時間 |
---|---|---|---|
1(1日目) | 下塗りシーラー | 1回 | 乾燥間隔4時間以上 |
2(1日目) | 弾性塗材:ベース塗装(白) | 1回 | 乾燥間隔4時間以上 |
3(2日目) | 弾性塗材:模様塗装(白) | 1回 | 乾燥間隔16時間以上 |
4(2日目) | 上塗り1回目(指定色) | 1回 | 乾燥間隔4時間以上 |
5(3日目) | 上塗り2回目(指定色) | 1回 | - |
- 複層弾性塗材の色は白です
- 弾性塗材の模様塗装が終わった翌日に乾いてから、上塗り塗料を2回塗って完成です
- 複層弾性塗材の工事は最低3日掛かります
単層弾性塗材の工程
工程 | 作業内容 | 塗り回数 | 塗り重ね乾燥時間 |
---|---|---|---|
1(1日目) | 下塗りシーラー | 1回 | 乾燥間隔4時間以上 |
2(1日目) | 弾性塗材:ベース塗装(指定色) | 1回 | 乾燥間隔4時間以上 |
3(2日目) | 弾性塗材:模様塗装(指定色) | 1回 | 乾燥間隔16時間以上 |
- 単層弾性塗材の色は仕上げの色(指定色)です
- 弾性塗材はベース塗装にも模様塗装にも仕上げの色が付いているので、上塗り塗装が要りません
- 弾性塗材の模様塗装を塗って完成です
単層弾性塗材の色は指定した色が付いているので、乾いたら塗装は終了です。
上塗りの工程が2回分省けるので、工事が2日早く終わります。
- 単層弾性塗料を分かりやすく言い換えると、複層仕上げ塗材(弾性)の省工程版の塗材です
- この塗材を使うと、水増し手抜き工事が出来るので一昔前に大流行しました
- そしてなぜか、今ではその手抜き工法がなし崩し的にメーカーから公認の塗り方として認められてしまいました!?
外装用薄付仕上げ塗材
主な総称は【リシン・リシン吹き付け】です。
薄塗りの砂壁状の塗材で、樹脂リシン、アクリルリシン、じゅらく、などがあります。
外装用厚付仕上げ塗材
外装用塗材の中で、主な厚みが4~10ミリメートルのものを厚付塗材とします。
主な総称は【スタッコ・スタッコ吹き付け】です。
厚塗りの凹凸模様の塗材で、セメントスタッコ・樹脂スタッコ・シリカスタッコなどです。
装飾仕上塗材(ジョリパットなど)
外装用塗材の中で、様々な質感と高い意匠性を表現できるものを装飾仕上塗材とします。
主な総称は【ジョリパット】ですが、ジョリパットはアイカ工業の製品名です。
なので総称と言って良いのか少々微妙です。
ジョリパット以外では、エスケー化研のベルアートや菊水化学のグラナダなどがあります。
工法
コテ塗り・ハケ塗り・ローラー塗り・吹き付けなど。
表現できる質感
御影石・砂岩調・自然石・陶磁器(タイル)調・リシン・砂壁調・吹付タイル・スタッコ・ウェーブ・シラス・リバー抑え・フラワー抑え・キャニオン・塗り壁調など
非常に沢山の質感を表現することが可能です。
まとめ
今回の記事では、我が家の外壁をの凹凸模様を形作っている「外装仕上げ塗材」について、下記の章にまとめて詳しく解説しました。
新築工事の場合は、この中から【素材・模様・色】などを選ぶ事になります。
外壁の塗替えを考えている場合は、上記の中で【素材・模様】は変えられませんので【色の変更】だけになります。
冒頭でもお伝えしましたが、スタッコ・リシン・ジョリパットなどの【艶消し外壁】には、基本的にそのまま艶消し塗料で塗り替える専用塗料があります。
【防水性】と【透湿性】は相反する性能ですが、どちらが優位と言う事はありません。
わざわざ基本性能を変えて【透湿性→防水性】にする必要はありませんので、特殊な場合を除いて現状の性質を維持するのが、外壁塗装の教科書通りの施工となります。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事の内容が腑に落ちて早めに今の悩みが解決すると嬉しいです。
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