リシン吹き付け外壁とは?メリット・デメリット・模様の実例を解説

リシン吹き付け外壁

リシン外壁は新築時の外壁仕上げ塗材の1つです。

現存する外壁の吹き付け仕上げ材として最も古いのですが、今でも木造モルタル外壁ではジョリパットと共に最も多く使われています。

リシン吹き付け外壁の特徴は「艶消しのマットな仕上がり」と「無理に雨水を弾かず透湿性が有る=呼吸を行う外壁」です。

今回はそんなリシン外壁について分かりやすく解説をします。

目次

「リシン吹き付け」とは?

リシン吹き付けは、主にモルタル外壁・ALC(ヘーベル)外壁の上に「吹き付け」で施工します。

塗料と骨材を混ぜた材料を一緒に吹き付けて外壁に塗装します。

見た目は「細かい石粒が均一に吹き付けてある」という1パターンなので分かりやすいです。
(ただし、他の材料(ジョリパットなど)でも「リシン吹き付け風」の外壁も出来るので、本物か偽物かを見分けるのは難しいです)

リシン吹き付けの特徴

まずはリシン吹き付けの特徴をまとめ、1つ1つ解説していきます。

  • 細かい石粒状の肌感の仕上がり
  • 艶が無い
  • 雨水を弾かない透湿性が有る

細かい石粒状の肌感の仕上がり

細かい石粒状が外壁に均一に付いているのが、リシン吹き付けの見た目です。

リシン吹き付け

上記画像の中心部分を拡大してみると、石粒がハッキリと見えるのが分かります。

リシン吹き付け外壁の表面
リシン吹き付け外壁の表面

艶が無いマットな風合い

リシン外壁のには艶が無く、下記のように落ち着いた感じのものが多くなります。

リシン吹き付け
リシン吹き付け
リシン吹き付け
リシン吹き付け外壁

雨水を弾かない透湿性が有る

外壁塗装には、雨を弾くタイプの塗装と弾かないタイプの塗装があります。

この両者には優劣が無く、現在の建物では特に雨水を外壁の表面で防ぐ必要がありません。

「水を弾く方が良い」と誤解されやすいのですが、実際には弾く方にも弾かない方にもメリット・デメリットが同程度あるからです。

外壁のタイプ・特徴
  • 雨水を弾かないタイプの外壁は【透湿性】に優れている…雨水を自在に浸透・放出させる
    (リシン吹き付け・ジョリパット・スタッコなど)
  • 雨水を弾くタイプの外壁は【防水性】に優れている…雨水を浸透させず・放出させにくい
    (吹き付けタイル系・サイディング系・塗替え塗装済みの外壁)

※外壁塗り替えの際は、既存外壁の特徴を変えずに塗料を選ぶ事が重要です

リシン吹き付けのメリット

リシン吹き付けのメリットは以下になります。

  • 汚れにくい
  • 落ち着いた雰囲気
  • チョーキングが起きない
  • 材料費・工事費が安い

では、1つ1つ解説していきましょう。

汚れにくい

リシン外壁は「汚れやすい」場合も有りますが、逆に「汚れにくい場合」も多いものです。

下記画像は【築17年】の家のリシン外壁です。
このように、条件によりリシン外壁でも汚れにくい場合があります。
(ただし「汚れる・汚れない」の法則が一定ではありません)

リシン吹き付け外壁

中央にあるたてどいの左側が西面・右側が北面。
玄関門扉の近くに若干コケ汚れがありますが、ほとんど汚れていません。

リシン吹き付け外壁

同じ家のリシン外壁の拡大

落ち着いた雰囲気

「艶消しの風合い」の外観は、ピカピカ光っているよりも落ち着いた雰囲気と共に高級感を醸し出します。

※落ち着いた雰囲気で、より高級感があるのが【ジョリパット外壁】です

チョーキングが起きない

外壁劣化の目安として「チョーキング」がありますが、リシン外壁を含む【艶消し外壁】ではチョーキング現象はほとんど起きません。

ですからリシン吹き付け外壁では、チョーキングだけを外壁塗装の時期の目安にしてはいけません。

チョーキングしない外壁

リシンはチョーキングしない外壁

外壁のチョーキング

汎用塗料はチョーキングする

材料費・工事費が安い

リシン外壁で代表的なエスケー化研のソフトリシンと、ジョリパットの設計価格を調べてみると下記のようになり、倍以上違うのが分かります。

リシン吹き付け

エスケー化研 ソフトリシンの設計価格
【1平米あたり1,850円】

ジョリパット ワイルドランダム柄外壁

アイカ工業 ジョリパットの設計価格
【1平米あたり4,200円】(ワイルドランダム柄)

リシン吹き付けのデメリット

続いて、リシン吹き付けのデメリットは以下になります。

  • 汚れやすい
  • コケが生えやすい

こちらもそれぞれ解説します。

汚れやすい

メリットの項目でも書きましたが、リシン外壁は「汚れやすい」場合も有ります。

リシン外壁の汚れ
窓の両端からの汚れ筋
リシン外壁の汚れ
リシン外壁の汚れ

ただし、窓下の汚れについてはどの外壁でも起きる現象です。

コケが生えやすい

リシン外壁の「汚れ」に見えるモノは、ほとんどこの「コケ」です。

下記画像のようにリシン外壁のコケの付く場所は、雨水で外壁が濡れて乾きにくい場所になります。

外壁のコケ
外壁の北側
外壁のコケ
窓のコケ

「リシン外壁」の種類

リシン外壁には、吹き付けないタイプもあります。
この記事で「リシン吹き付け」と書くようにしているのは、それらと区別するためです。

リシン外壁には下記の3種類があります。

吹き付けタイプ

一般的に「リシン外壁」と言えばこの吹き付けを指し、この記事で解説しているタイプで、主に新築で使います。

  • 吹き付けることで、骨材の石粒の立体感が映えて綺麗に仕上がります
  • 吹き付けの施工で均一に吹き付けないと、石粒の量で外壁がムラムラに見えてしまいます
  • 商品によって、塗料と骨材が最初から混ざっているもの【骨材既調合品】と、塗料だけのものに別途骨材を入れ骨材の量や種類を変えられる【骨材使用時調合品】があります。
リシン・吹き付け施工タイプの材料

リシン・吹き付け施工タイプの代表的な材料には下記の商品があります。

ローラー施工タイプ

吹き付けではなく、ローラーで塗れるように調合してある材料で、主に補修用に使います。

  • ローラーで塗る事で、吹き付け時の飛散を防止出来ます
  • ただ、骨材の立体感が損なわれてしまうので、吹き付け施工よりは美観がイマイチです
  • 広い面を塗ろうとすると、ローラーで塗った線が出てしまうことがあります
  • 基本的に既調合品となります
リシン・ローラー施工タイプの材料

リシン・ローラー施工タイプの代表的な材料には下記の商品があります。

リシン吹き付けの使われ方のパターン

上記のメリット・デメリットを踏まえ、現状の住宅に使われているリシン吹き付けの使われ方について解説します。

外壁全体がリシン外壁の場合

外壁全体がリシン外壁のみの家です。

外壁がリシン吹き付けのみだと、全体的にシンプルな印象になります。

リシン吹き付け外壁
シンプルなリシン吹き付け外壁
リシン吹き付け外壁塗装完成
リシン吹き付け外壁塗装完成

メインの外壁はリシンでアクセント部分にジョリパットを使う

メインの外壁はリシン吹き付けで、アクセント部分にジョリパットを使う事も多いです。
(この方が多いと思います)

主にアクセント部分はリシン吹き付けではなく「ジョリパット」で模様を付けています。

アクセント色のある外壁の塗装
アクセント色のある外壁の塗装
アクセント色のある外壁の塗装
アクセント色のある外壁の塗装

外から見える場所はジョリパット外壁で、見えない側がリシン外壁

外壁塗装完成
リシン吹き付け外壁
ジョリパット外壁
ジョリパット外壁

リシン外壁の塗り替え

リシン外壁の塗替えは「ピカピカしない艶消し外壁」という特徴を踏まえて考えないといけません。

つまり、現状でよくある【アクリル<ウレタン<シリコン<フッ素…など】の塗料選びの尺度は使えないということです。

なぜなら…リシン塗り替えには専用の塗料があるので基本的に選択肢が無いのです。

リシン外壁の塗り替え用塗料

リシン塗り替え用の塗料は、下記のように各メーカー1種類づつしかありません。

これらの塗料は【砂壁状意匠塗材】というカテゴリーです。

リシン外壁の塗り替え用塗料は、ジョリパットの塗り替え用塗料と同じです。
(ジョリパットとリシン吹き付けは、特徴が同じなので塗り替え用の塗料は同じになります)

リシン外壁の塗替えで「汎用塗料」を塗ってはいけない理由

「汎用塗料」とは、前出の現状でよくある【アクリル<ウレタン<シリコン<フッ素…など】の塗料の事です。

これら汎用塗料の特徴は…

  • 雨水を弾く膜を張る・基本的には艶がある
    という2点

それに対してリシン外壁の特徴は…

  • 雨水を弾かず浸透/放出する・艶は無い
    と言う2点

ですから、リシン外壁に汎用塗料を塗ってはいけない理由を簡単に言うと、これらの「基本性能・特徴を変えてしまうから」になります。

特に水分の浸透・放出という性能は大切です。
汎用塗料を塗ってしまうと表面をラップで覆うようになるので、サッシの隅やクラックから雨水が浸透してしまうと、その水分が外に出られなくなってしまいます。

外に出られなくなった水分は水蒸気となり、塗膜を押し出して「膨れ→剥がれ」となります。

基本性能を踏襲した専用塗料で塗り替えを行えば、このような事が起きません。

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。

この記事では下記の点についてまとめてみました。

この記事の内容が腑に落ちて早めに今の悩みが解決すると嬉しいです。

興味がありましたら、他の【塗料の種類・色選び】関連の記事も読んで頂けると有りがたいです。

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この記事を書いた人

塗装職人の2代目・職人15年・外装会社経営15年。塗料や塗装の知識・業者選び等…正しい情報を分かりやすく発信します。このサイトの目標は「誰もが適切な診断と良い工事が出来るようになる事」

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