外壁塗装の見積りは複数から取るのが望ましいのですが、途中で困ってしまう事もあります。
それは、届いた見積り書に書いてある塗料の種類やカテゴリーが分からない事。
この記事では【塗料の辞典】として使えるように、分類別に塗料を分けて紹介しています。
外装仕上げ塗材
「塗材」という言葉を始めて見る方もいるかと思います。
「塗料」では無く「塗材」です。
多くの外壁は【フラット=平ら】ではなく何らかの凹凸模様が付いています。
この凹凸模様も【塗料】のカテゴリーに入り、塗材という名前になります。
塗材の中でも、外壁に使うものを「外装仕上げ塗材」と呼んだり「外装仕上げ用塗材」と呼んだりします。
外装仕上げ塗材の概要
- 外装仕上げ塗材とは、建物の外装の表面に凹凸模様をつけるための材料のこと
- 内装の仕上げ塗材として使う場合もある
- 新規に凹凸模様を付ける時にだけ施工するので、外壁塗装(塗り替え)の時にはほとんど使わない
塗り替えで【外装仕上げ塗材】を使う時
- 全面的な凹凸模様の再施工工事の時
- 部分的な補修工事を行った後の修復工事の時
外装仕上げ塗材の特徴
- 一般塗料(いわゆるペンキ)との一番の違いは、外装仕上げ塗材は【外装の模様を立体的に造る】ところ
- 一般塗料の厚みが0.01mm程度の液状であるのに対して、仕上塗材の厚みは3mm~10mm 程度ですから、300倍~1,000倍にもなる
外装仕上げ塗材の目的
- 美観の向上
- 下地の保護
- ヒビ割れ耐性
- 下地不陸感の軽減
- その他
施工する主な用具・道具
ローラー・刷毛・左官こて・吹き付け(ガン吹き)
主な模様(パターン・テクスチャー)
凹凸模様やゆず肌模様など
材質
セメント、合成樹脂などの結合材、顔料、骨材
工程
下塗り・主材塗り・上塗りの3工程が基本
外装用上塗り塗料
一般的に「塗料」の意味で使われる事が多いのが、この「上塗り塗料」です。
「ペンキ」とほぼ同じ意味で使われています。
外壁塗装で一般の方が塗料の質やグレードを選び、価格や耐候性の寿命に関わるのはこの「外装用上塗り塗料」になります。
外装用上塗り塗料の概要
- 外装用上塗り塗料は紫外線や雨水に対抗する性能など、外部使用に耐えられるように作ってある
- 内装で塗っても構いませんが、費用面でもったいないかも…
- ローラー・刷毛・吹き付け(スプレー)などで、液状の塗料でコーティングするための材料のこと。
- 厚みが0.01ミリ程度なので、塗装前の下地の模様(凹凸感)は変わる事無く、フラット面に塗ればそのままフラットの塗装に仕上がる
塗り替えで外装用上塗り塗料を使う時
- 塗装工事の仕上げで塗る
- 外装仕上げ塗材による施工で着色まで行う場合には、その上に外装用上塗り塗料は塗らない
外装用上塗り塗料の特徴
- 外装用上塗り塗料は、一般的に言う「塗料=いわゆるペンキ」
- 塗装前の状態は液状ですが、水道水のようにはシャバシャバせずにガムシロップ程度の粘度がある
- 内装用塗料との違いは、太陽からの紫外線や雨水に対する耐候性がある事
- 仕上げに塗る塗料なので最後に塗る
- 一般塗料の厚みは0.01mm程度です。
さらっと進んでも良いのですが、この部分が少々分かり辛いので丁寧に説明します
- 外装用上塗り塗料は3回塗りのうちの2回目と3回目の両方に塗る塗料 (1回目は下塗り)
同じ意味なのですが、業者によって見積り上の表浮きが下記のように違います
- 2回目に塗る事を【中塗り】、3回目に塗る事を【上塗り】と別々の工程として表記する
- 2回目と3回目に塗る事を【上塗り2回塗り】とまとめて表記する
外装用上塗り塗料の目的
- 美観の向上
- 外壁表面の保護
- 付加価値機能の追加
施工する主な用具・道具
ローラー・刷毛・スプレー
材質・成分
塗料は液体の時に塗られて、その後乾燥して被膜になり、乾燥の過程で膜になって残るものと、蒸発して残らないものがあります。
塗膜になって残るもの
- 顔料(色をつけ、下地をかくす作用)
- 樹脂(物に付着して膜になる役目)
- 添加剤(塗料の性能を補助する)
塗料から揮発してしまうもの
- 有機溶剤や水(塗料の粘度を調節して塗りやすくする働き)
- 一部の添加剤
塗料の構成
顔料
顔料は主に塗料の色彩や機能を形作る成分
樹脂
樹脂は塗膜を形成する成分
樹脂の種類によって塗膜性能(耐久性・耐侯性・密着性)が概ね決定される
添加剤
添加剤は塗料や塗膜の性能を向上させる成分
溶剤
溶剤は樹脂を溶かしたり、塗装時に塗料を希釈したりするもの
工程
下塗り・主材塗り・上塗りの3工程が基本
内装仕上げ塗材
外装用の「塗材」同様に、内装用の塗料にも凹凸模様を付ける塗材があります。
外装用の塗材とは役割が違うので、別々の商品ラインナップになっています。
内装仕上げ塗材の概要
外装用と同様で、建物内装の表面にローラー塗り・こて塗りなどにより凹凸模様をつける
ただし、内装用の材料は外装用に使ってはいけません。
なぜなら外装用に不可欠な「耐候性」が弱いので、外部には耐えられないからです
塗り替えで内装仕上げ塗材を使う時
全面的な内装リノベーション工事の時
内装仕上げ塗材の特徴
- 内装仕上げ塗材の大きな特徴は意匠性
- 調湿性などの機能性塗材の場合への期待度が高いのも特徴と言える
- 内装仕上げ塗材の場合の立体感は外装ほどは無く、フラットに近いものが多い
- 多少の素材の厚みが有ったとしても、外装のように凹凸は付けないのが一般的
内装仕上げ塗材の目的
- 美観・デザイン性
- 居心地の良さ
- 調湿性
- 脱臭・抗菌・結露防止
施工する主な用具・道具
特殊ローラー・刷毛・左官こて・くしべら・吹き付け(ガン吹き)
主な模様(パターン・テクスチャー)
珪藻土風仕上げ・しっくい調・凹凸模様・ゆず肌模様、2色使いで流れを出す模様や・多彩色模様など、100種類近いパターンがある
工程
下塗り・主材塗り・上塗りの3工程が基本(下塗り・上塗りの2工程の場合もある)
内装用上塗り塗料
室内用の上塗り塗料が内装用上塗り塗料です。
外装用の上塗り塗料に比べて、求められる機能に違いがあります。
住宅に塗る内装用の塗料は、特殊な機能が求められる場合が多いでしょう。
内装用上塗り塗料の概要
- 内装用塗料は、紫外線や雨水に対抗する性能を外装用上塗り塗料ほどは必要としない
- 【内外部兼用塗料】と書いてある場合もある その場合は「外部に塗っても良いですよ」と言う程度の意味
- ローラー・刷毛・吹き付け(スプレー)など、液状の塗料で美装のために塗る材料
- 厚みが0.01ミリ程度なので、塗装前の下地の模様(凹凸感)は変わらない フラット面に塗ればそのままフラットの塗装に仕上がる
内装用塗料の特徴
- 内装用塗料を塗る場所は、学校や公共施設などの室内・廊下などがメイン
- 住宅内装用塗料の場合は、耐久性よりも臭いの少なさや、落着いた仕上がり感、汚れが付きにくい・拭き取りやすい、などの機能面が求めれれる
内装用塗料の目的
居室に塗装をする場合は、以下のような特殊な機能性塗料を塗る場合の方が多い
- 美観(落ち着いたつや感とシックな仕上り)
- 色の変更(クロスとは違い、自由な色彩に出来る)
- 防カビ・抗菌作用
- 調湿効果
- ヤニ止め・アク止め
- DIYで手軽に塗装を楽しめる
- 花粉・ハウスダスト・カビなどを吸着/分解する
- 照明の光を反射して室内が明るくなる
- 不快な虫が寄りつきにくくなる
- 撮影スタジオ用の完全艶消し塗料
施工する主な用具・道具
ローラー・刷毛・スプレー
工程
下塗り・主材塗り・上塗りの3工程が基本
屋根用塗料(上塗り)
一般的な言い方をすると【屋根用のペンキ】です。
屋根用の塗料に求められるのは耐候性が一番ですが、昨今の技術進歩により様々な機能付き塗料が開発されています。
屋根用塗料の概要
- 屋根用塗料とは各種屋根材に塗装するのに最適な調合がされている塗料
- 特に屋根材ごとに適した下塗り塗料の選択が出来るか重要
- 屋根用塗料にも水性・油性(弱溶剤系)があり2020年現在は油性が主流だが、水性塗料の塗膜性能の向上が著しく今後は水性塗料が主流になる可能性が高い
屋根用塗料の特徴
- 屋根用塗料には紫外線・降雨(酸性雨)への耐候性が求められる
- 基本的には液状の「ペンキ」だが、一部の塗料では断熱効果を狙った【中空の球】や、防滑効果を狙った【特殊軽量骨材】が混ざっている塗料もある
- 遮熱塗料や断熱塗料・防滑加工の塗料など、各種の付加機能付き塗料も多い
屋根用塗料の目的
- 屋根材表面の劣化保護
- 防藻・防カビ・耐汚染性
- 遮熱機能
- 断熱機能
- 雪が滑らないようにする
- 雪が滑りやすくする
施工する主な用具・道具
ローラー・刷毛・エアレススプレー
工程
下塗り・主材塗り・上塗りの3工程が基本
下塗り塗料
各塗料を塗る下地として必要なのが、この下塗り塗料です。
どの上塗り塗料も実際には下塗り塗料の上に塗ることになります。
つまり、下塗り塗装の状態が整っていなければ、どんな塗装の達人が塗っても・どんな最高級の塗料を塗っても、良い結果が得られず意味が有りません。
塗料の「土台」ですから、ココが一番肝心です。
下塗り塗料の概要
- 下塗りは塗装の基本
- 塗る対象の素材や状態に応じて、適切な下塗り塗料を選ぶ事が出来るか?が、塗る技術よりも重要
- いくら良い塗料をその上に塗ったとしても適切な下塗りが行われえていなければその効果を得られない
- 下塗りが不要な特殊な塗料もある
下塗り塗料の役割
下塗り塗料と一括りにまとめても、その役割は大きく5つに分かれます。
1. 塗装前の下地が平滑過ぎる場合
アルミやステンレスなどツルツルしていて塗料の密着が悪い場合には、適切に下塗りを行わないと塗った塗料が剥がれてしまいます。
そうならないためには、下記の事が出来る下塗り塗料をきちんと塗る事が必要です。
- 下塗り塗料は下地の表面と接着材のように密着する
- その上に塗る塗料がきちんと密着出来るような状態になっておく
このように下地と下塗り塗料が密着していれば、中塗り・上塗りの塗料が剥がれることなく密着し続ける事が出来ます。
2. 塗装前の下地が弱っている場合
- コロニアル屋根が紫外線劣化でやや弱っている
- ケイカル板に最初に塗装を行う時
このような場合には、塗装をしても素材の表面が粉っぽくなっているので、いくらその上に塗っても素材の表面が塗装と一緒に取れてしまいます。
そうならないためには、下記の事が出来る下塗り塗料をきちんと塗る事が必要です。
- 下塗り塗料は弱っている下地に浸透し、粉っぽくなっている下地を接着させる
- その上に塗る塗料とも、しっかり密着出来るような状態になっておく
このように下地の脆弱さを補って固める事で、中塗り・上塗りの塗料が剥がれずに密着し続ける事が出来ます。
3. 塗装前の下地面が吸い込みやすい場合
画用紙に油性ペンで描こうとしても裏側にまで吸い込んでしまい、綺麗に描くことが出来ません。
同じように塗装をする下地には【吸い込みやすい下地】と【吸い込まれてしまう塗料】の組み合わせがあります。
主に油性塗料は吸い込まれやすく、吸い込みやすいのは下記のような下地です。
- ベニヤ
- 材木
- モルタル・コンクリートの新設生地
これらの下地の上に綺麗に塗装をする場合には、下塗り塗料で下地への吸い込みを止める必要があります。
- 下塗り塗料は下地の微細な巣穴の奥まで行かない程度の粘度や粒子を持ち、その上に塗る中塗り・上塗り塗料が吸い込まれないような膜を張っておく
- 下塗りの表面は凹凸がなくなるように出来るだけ平らになり、上に塗る塗料が平滑に仕上がるような状態になっておく
このように下地への吸い込みを止める事で、中塗り・上塗りの塗料をムラなく綺麗に仕上げる事が出来ます。
4. 下地の色を隠したい場合
下地が上記のように整っていたとしても、色の問題で下塗り塗料が必要になる事もあります。
場合によっては下塗りを塗った後でさらに塗る事になるので、順番だけで言うと2番目の塗装になりますが、分類としてはまだ下塗りの段階です。
- 黒い色を白くしたい場合
- 高彩色を塗る場合
ここの塗装をキチンとしておかないと、何度塗っても下地の色が透けてしまうので、きちんと【隠ぺい】しておく事が必要です。
- 下塗り塗料は主に【白く】その上に中塗り・上塗りを塗装する事で下地が透けないようにする
- 下塗りの表面は、ツルツルでは無くやや凹凸状になるようにして、上に塗る塗料に厚みを持つ事が出来るようにしておく
このように下地の色を隠ぺいしておく事で、中塗り・上塗りの塗料を正しい色として見せる事が出来ます。
5. 塗装する下地が鉄の場合
鉄は錆びるので、錆止め塗料を塗ります。
- 錆止め塗料は下地の錆の進行を抑え、その上に塗る中塗り・上塗り塗料ときちんと密着する事で錆を抑制する
- 錆止め塗料は樹脂や添加剤に工夫を凝らす事で、錆の進行を抑制する
現場用添加剤
塗料の隠し味的に、基本の塗料に現場で加えることが出来る材料です。
現場用添加剤の目的
現場用添加剤は、塗装をする現場で下記の目的で上塗り塗料に混ぜて使います。
ただし、添加剤を入れる量とその効果には限度があるので、注意が必要です。
- 着色(調色)を行う
- つやの調整を行う(艶を落とす)
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事では下記の点についてまとめてみました。
この記事の内容が腑に落ちて早めに今の悩みが解決すると嬉しいです。
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