「バルコニーのFRP防水のトップコートを早めに塗り替えると剥がれる危険がある」というのは、ちょっと不思議に思われるかもしれません。
早めのメンテナンスが悪い事だとは思えないですよね。
確かにどんなものも「早めのメンテナンス」が良く理想的な筈ですが、今回の「バルコニーのFRP防水のトップコートの塗装」に関しては例外なので、こうして記事にしています。
ですから、この記事は下記のような方に向けた内容です。
- バルコニーのFRP防水のトップコートを早めに塗り替えようかな、と思っていてまだ塗っていない人
- もう塗ってしまった人
- もう塗ってしまって、剥がれてしまった人
FRP防水のトップコートは早く塗り替える必要が無い
まず、そもそもFRP防水の塗り替えを早くする必要が何も無い点について解説します。
勿論早めに塗り替えたからと言って必ず悪影響が起きるとは言い切れません。
とは言え、わざわざお金と時間を無駄に使って早く塗る危険を冒す必要はありません。
一番安全で確実なのは、適切な時期に適切な方法で塗り替える事なのです。
FRP防水を早く塗り替えると「なぜ危険なのか?」
次に、FRP防水の塗り替えを早くすると、なぜ剥がれるのか?について解説します。
トップコートを塗り替えると、なぜ剥がれてしまうのか?
FRP防水のトップコートを早めに塗り替えると何が危険なのかと言うと…
その塗った塗料が剥がれる危険があるからです。
FRPトップコートに限らず、塗装はツルツルしたところには密着しにくい性質が有り剥がれやすくなります。
築年数が浅いと、FRPトップコートの劣化がまだ進んでいないので、ツルツルの状態が保たれているので剥がれやすいのです。
剥がれたら塗り直せば良い訳ではない!
当然塗ったものが剥がれると良くないのですが、その影響は意外に大きく「剥がれた」というだけでは済みません。
「一般的」には、塗ったトップコートが剥がれてしまった時対処方法は「塗り直し」ですね。
しかし、塗り直しは「応急処置」であり根本的な解決にはなりません。
剥がれたら取り返しがつかない…
「専門的」には、剥がれたとこを塗り直したとしても、その後も次から次へと塗った時の塗料が剥がれてしまう現象は止まりません。
もう元の剥がれない状態には戻れなくなってしまいます。
良かれと思って工事をしても逆効果に!?
もしこれが、新築時から何も手を施していないのなら、建築会社の責任ですからどうしようも有りません。
しかし、自らが良かれと思い「早めにメンテナンスした方が良いから塗っておこう」といって工事をしてしまったのなら、全く逆効果になってしまいます。
つまり、しなくてもよい工事をわざわざして、かえって悪い結果を招く事になってしまうという事なのです。
早く塗り替えをしてしまう理由
では、どうして早く塗ってはいけないのに、早く塗ってしまうケースが出て来てしまうのでしょうか?
その原因について解説します。
メンテナンスの時期としてはまだ早いうちにFRPの再塗装をすると、剥がれる可能性が高くなります。
剥がれる原因は「まだツルツルしている」からです。
早く塗ってしまうシチュエーションとして2パターンあるので解説します。
自分で頼んでしまう場合
家を大切にしたいので、早めにメンテナンスをした方が良いという場合です。
この場合のポイントは2つです。
- FRP防水に特に異常が無い場合は、早めのメンテナンスは必要は無い
- 塗装をする場合は、グラインダー研磨をしっかり行い強制的に劣化状態にしてから塗装を行う事
つまり、上記2つの判断が適切に出来ない業者も沢山いて、そんな業者に頼むと、せっかく塗装をしても剥がれる可能性が高くなります。
業者に勧められる場合
特に間違っていないような気もしますが、これが間違いの元です。
その理由は、ほとんどが外壁塗装の「ついで」的な感覚で「雨漏りしないように一応塗っておきましょう」というような軽い感覚で進んでしまうからです。
そんな感じで工事をするわけですから「早く塗ると剥がれる事がある」なんて知らない担当者がほとんどなのです。
FRP防水の塗り替えの知識がある業者は、基本的に少ない
そもそも業者側がきちんとその事を把握していれば、不要な塗り替えは防げる筈です。
経験と知識がある業者なら、適切に「まだ塗る必要が無いと」判断が出来ます。
営業マンが売り上げを上げたい
経験と知識が無い業者(見積り担当者)だと、売り上げが上がれば自分の成績UPにも繋がるため、床の塗り替えに関しても何の判断も無しに勧めるでしょう。
さらに、そんな業者であれば、トップコートの塗装自体も適切に工事が出来ないので、せっかく塗ったものが剥がれる散々な結果になってしまいます…。
職人の技術・知識不足
残念ながらFRPの再塗装に限れば、慣れている業者・職人はあまりいません。
本職のFRP防水屋さんでは、新築工事ばかりで再塗装の現場がほとんど無いからです。
また、FRPの再塗装は営業マンが工事の必要も無いのに勧めているケースがほとんどです。
確かにそこまで行くと明らかに遅いですが、雨漏りしないためにFRP防水の塗替えをするというのは勘違いです。
FRP防水の再塗装工事を早めに勧める業者は、ただ売り上げを上げたいか・知識が足りないかのどちらかです。
職人の経験と知識で剥がれを回避出来る事も
例えば知識と経験の無い担当者が,、まだ塗る必要の無いツルツルしたFRP防水の塗り替えを受注してしまった場合でも剥がれを回避できる可能性は有ります。
それは、現場施工の職人に知識と経験が有る場合です。
(とは言え、気が利いて知識と経験が有る職人さんなんてあまりいませんが…)
FRPトップコートの塗り替えでは、工事の工程でいずれにしても表面の研磨があります。
この工程で、ツルツルして密着性が悪い床を削っていき凸凹にするのですが、これを適度に多めに行う事でツルツルでは無い表面にする事も出来ます。
ほとんどの職人では回避は無理
ただ、この工程を省く手抜き職人も多く、行ったとしても通常通りの研磨量だとあまり凹凸にならないので、一般的な職人がいつも通りに工事をすると、後で剥がれてしまう事になります。
塗料選択のミス
FRPトップコート塗り替えはまだ事例不測の分野
上記までの話は適切な工事内容を行った場合です。
しかし、FRP防水のトップコートの塗り替え工事というのは、まだまだ事例自体が少なく業者側の経験も防水材メーカーの商品開発や施工技術の啓蒙が不足している分野なのです。
非純正塗料を使う事も
さらに、実は塗料・材料の方でも「なんちゃってFRPトップコート」みたいな材料が売られていたりします。
また、FRP防水のトップコートとしてウレタン防水のトップコートを塗っているといった業者もホームページ上でよく見かけます。
これらの材料は、FRP防水のトップコートの上にも塗れるのですが、その塗料を塗った上には本物(純正)のFRP防水やトップコートを施工する事が出来なくなります。
その事をよく確認して工事をするなら良いのですが、概ねそんな事は無く何事も無いように工事を済ませてしまうものです。
非純正塗料を塗れば、当然剥がれやすい
それも、適切な劣化の時期を迎えてから
の工事なら問題は無いでしょうが、早めの塗り替えでそもそも剥がれやすい下地です。
非純正の塗料の方が純正塗料よりも剥がれにくいという事は有り得ないでしょうし、非純正の塗料を使う防水屋さんが、研磨等を注意して行う可能性も極めて低い事になります。
なんちゃってFRPトップコートとは?
ネット等で調べていると「FRP防水の上に塗れます」というような塗料が売られているのを目にする事が有ります。
どんな塗料なのかとよく見てみると、既存のFRP防水の上に塗っても大丈夫…ではあるけれども、新築時のFRPトップコートと同じ性質では無い…というものばかりです。
適当に塗っても剥がれない時がある理由
そしてそのように劣化が見られれば、知識の無い営業マンの場合でも防水業者に下見を依頼して判断をするようになります。
早過ぎる塗替えで剥がれてしまうケースでは、FRP防水面に特に何も劣化症状が無い場合です。
費用の掛かる防水業者に工事を依頼するよりも「簡単に塗装業者でも出来そう」に思えてしまいます。
工事を担当するべき業者が逆になってしまうのです。
- 劣化が無くて簡単そうな状況の塗り替えは、しっかりとグラインダー研磨が必要なので防水業者が適任です。
- 少々劣化している方がしっかりくっ付いてくれるので、塗装業者でも出来ますし、DIYでも剥がれずに行ける可能性が高いです。
とは言え「その劣化の度合いの判定」が難しいのですが…
バルコニーのFRP防水のトップコート塗装を行う時期の目安
では、実際に「早過ぎる時期」と「丁度良い時期」はどの位を目安にすれば良いのでしょうか。
築10年までは、塗り替えなくて良い
バルコニーのFRP防水床面に異常が無い場合は、築10年程度はメンテナンスのための再塗装をする必要はありません。
きちんとFRP工事をしてある場合は概ね15年程度は塗らなくても大丈夫な筈です。
築10年から15年までの間は、要検討
築10年から15年の間に外壁塗装を行った場合が悩ましい時期です。
今の床の状態を観察して特に何も問題が無ければ、もう10年何もしないで過ごせる可能性があります。
なぜなら、築10年を過ぎてFRP防水に何も問題が無ければ、少なくとも新築時の施工不良は無かったと言えるからです。
そうなると、今後劣化していく要因は、トップコートの摩耗以外には無くなります。
トップコートの摩耗は履物を履く時と脱ぐ場所が一番多く、次に洗濯物を干す場所の足元です。
摩耗しているかどうかは、擦り減り方の様子と色の変化で分かります。
ですから、塗装をするかしないでおくかの判断材料は、上記の摩耗しやすい部分とその他の部分の摩耗の差を見比べて、今後の摩耗の進行を予測する事になります。
15年以上経っていたら「早過ぎ」では無いので塗り替える時期です
築15年以上経っていれば簡単で、塗り替えをした方が良いでしょう。
塗り替え寿命が延びても大丈夫な例
ただ、下記のような場所や条件で「何も問題が無く、摩耗の様子が感じられない」場合もあります。
その時はわざわざ塗り替えをする必要が無い可能性が高くなります。
- 床に敷石が敷き詰めてあり、FRP面が太陽の紫外線に当たっていない場合
- 北側にあるサービスバルコニー
- バルコニー外側の腰壁が高めに出来ていて、床面にほとんど太陽光が当たらないような場合
- バルコニーに屋根が掛っていて、床面にほとんど太陽光が当たらないような場合[/list]
注:「塗り替え」では無く「再防水」をする必要がある場合
以下の場合は防水に不具合が起きているので、築年数などに関係無く一刻も早く「再防水」が必要です。(トップコートの塗り替えでは対応できません)
- 床がヒビ割れていて雨漏りしている
- 床のトップコート塗装が剥がれていて、下地が見えている
- 床のトップコート塗装がヒビだらけになっている
もしも既に塗り替えをしてしまっていたら…
残念ながら、10年以内で既に塗り替えを行っていた場合については、今後どのようにしたら良いか解説しておきます。
既にFRPトップコートに剥がれがある場合の対応策
剥がれの程度にもよりますが、基本的には塗り替え工事に失敗があった事になります。
その工事の保証などを確認し、施工業者に確認してもらいましょう。
(その際は、あらかじめ剥がれ箇所の写真をデジカメやスマホで撮って送ると良いでしょう)
少々の剥がれの場合の対応
剥がれの程度が軽度なら、タッチアップ塗装で対応します。
1回のタッチアップでは済まない可能性が高いので、最初のタッチアップ以降で半年ごとに2回~3回は対応してもらえるかを確認すると良いでしょう。
剥がれ箇所がまばらな場合、数回の補修で剥がれが収まる場合もあります。
かなり剥がれている場合
その場合の対処方法は「防水のやり直し工事」になります。
防水のやり直しは、剥がれる工事をした業者ではきちんとした対応が出来ない場合があるかもしれません。
きちんとした防水のやり直し工事の確認方法
保証内の工事になっても別の業者に依頼しても、今度は失敗する訳には行きません。
依頼前の段階で、以下の工事内容になっているかを確認しておきましょう。
- トップコートの全面塗り替え工事では無い事
- 防水面と立ち上がり面の両方にガラスマットから防水をやり直す工事になっている事
- 床面に関しては、新規にベニヤ敷き込みを行う工事の方が望ましい
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事では下記の点についてまとめてみました。
この記事の内容が腑に落ちて早めに今の悩みが解決すると嬉しいです。
興味がありましたら、その他の【バルコニー防水】の記事も読んで頂けると有りがたいです。