工事には職人の腕や技術も大事ですが「仕事のクオリティーは道具選びで決まる」とも言われます。
適切な道具選びが出来ないと、思った通りの工事が出来ません。
当然、作業スピードも道具によって変わります。
良い道具が選んで早く仕事が進めば時間の余裕も生まれるので、さらに手間を掛ける事さえ出来ます。
「弘法筆を選ばず」というのは実際にありますが、弘法太子も通常は使いやすい「良い筆」を使っていたに違いありません。
また、作業内容に最適な道具を選ぶことが出来る知識と経験が無いと、どのような道具を使えば早く・正確に・美しく工事が出来るのかを見極めることが出来ません。
つまり・・・
- その仕事にはどんな道具を使えば良いか分かる
- その道具の中でどれが優れているか判断出来る
- その道具の適切な使用方法を知っている
- 使い終わった後の道具の管理が出来る
これらが出来て初めて職人は「技術」を語れるのではないでしょうか。
そこでここでは、外壁塗装の工程順にプロの職人が使う道具や用具について解説していきます。
実際の現場で使われている写真を中心に見てみましょう。
足場の道具・材料
今主流の足場は【くさび式足場】といい、大きな特徴が2つあります。
- 柱の45cm間隔に差し込み口があり、そこに繋ぎたいパーツを差し込んでいでいくだけで組立てが出来る。
- 足を載せる部分がパイプでは無く、ちゃんとした床になった。
これにより、作業効率が上がり、安全性も高くなりました。
足場資材を載せたトラック
足場を組んでパーツごとにまとめられています。
足場材にはパイプ材以外にもメッシュシート(青)やウレタンカバー(赤)などもあります。
ビケ足場は締めたり縛ったりしなくて良いので、足場を組んだり外したりする作業時間が以前の足場材より格段にスピードアップしました。
柱に45センチ間隔で部材を差し込める場所があります。
この穴にくさび状の突起の付いた部材を入れてハンマーで叩いて固定します。
高圧洗浄機の種類・パーツ
屋根にガッチリ食いついたコケを水の勢いで落としていくには14~15MPaの洗浄機が理想だと高圧洗浄機メーカーのホームページにも記載があります。
※15MPaとは150キロ圧(150kgf/cm2)とも言います。
エンジン式高圧洗浄機(150kgf/cm:150キロ圧)
おけに水を溜めてポンプで圧力を掛け、水道水で洗います。
防音仕様でない高圧洗浄機の場合は、エンジンを掛けている間はご近隣への影響が気になります。
洗浄機の噴射
高圧洗浄機のガンの先には各種パーツを選んで付けるようになっています。
ガンの握り先から噴射口までの長さは10㎝~1Mまで各サイズがあります。
噴射口に付けて水の出る幅や水の出かたを変えられるアタッチメントも各種あり、用途や使う場所により最適な組み合わせが選べるようになっています。
電気式のケルヒャーの高圧洗浄機。
家庭用より大きく、エンジン式の補佐的な使い方や塀の洗浄など外壁塗装以外の作業で活躍します。
洗浄機はガンやアクセサリー選びで業性が変わります。
現場の広さや外壁・屋根の場所ごとに適切なパーツを選んで作業する事が大切です。
道具選びの失敗
道具選びの失敗例では洗浄力が1.3倍になる「スーパーターボノズル」というアタッチメントがあります。
商品が悪いわけでは無いのですがこのノズルは小型の洗浄機用に使うもので、パワーのある15MPaの洗浄機には必要ありません。
そんなターボノズルですが電気式の高圧洗浄機の場合は重宝する場合もあります。
ちょっとした塀の塗装や補修工事の時の高圧洗浄には、電気式の洗浄機でも同じ仕組みのサイクロンジェットノズルを付ければ丁度良いパワーに出来るのです。
また、電気の高圧洗浄機は音が静ですから小工事の時は特に周囲の方に迷惑を掛けないで済みます。
養生用品の種類
養生は丁寧にしても仕上がりに関係が無いように思えますが、養生が早くて綺麗な職人は塗るのも綺麗なものです。
ですから、養生用品1つにしても使いやすい商品を選ぶことが塗装の仕上がりりにも影響します。
- 養生テープ(ガムテープ):25mm×25M
- マスカー:550mm×25M(テープ幅17mm)
- マスキングテープ(和紙のテープ):18mm×18M
マスカーはあらかじめガムテープとビニールが付いているので、テープを貼ってからビニールを付ける手間がなくなりました。
掃き出し窓や大きく広い面を養生するには、昔ながらのポリシート(ノーポリ)を使います。
床の養生で、作業上何度も歩く場所にはブルーシートの1mロール巻きのものを使います。
塗装用具の種類
塗装をするには、ハケやローラー等の「塗るもの」と、各種の「容器」が必要です。
塗る塗料の種類によっても変えますし、外壁や塗る対象によっても変えなければなりません。
容器は作業性だけの問題ですので、各職人によって好みが分かれます。
外壁塗装の場合は面積的にもハケよりローラーをよく使います。
この数年で塗料の種類も増え、それに対応した各種のローラーやハケの新製品もどんどん出ているので、より良い道具や用具を試しながら探していかなければなりません。
ローラー
外壁塗装で一般的に外壁塗装でよく使われるのは、写真のスモールローラー6インチの毛丈25ミリ。
近年ローラーの種類が増えて使い勝手が良くなってきました。
種類の違いは、差し込みのタイプ・直径の太さ・ローラーの長さ・毛の長さ・毛のタイプなどがあり、それぞれの組み合わせの中から選びます。
ハケ・刷毛
ハケで塗っていた部分もローラーで塗るようになり、昔よりハケの出番は減っています。
とは言え、隅や細い部分には当然ハケが必要です。
ハケには写真のような「筋違(スジカイ)刷毛」や「目地刷毛」のような形の分類と、毛の種類(山羊・豚・馬・樹脂)の違い、柄の長さや形の違いなど様々です。
塗料容器
塗る時に塗料を入れる容器は、専用の外容器(バケツ)の内側にスッポリ入る薄いポリ容器を入れて塗ります。中容器を外せば次の塗料を塗るのにすぐ使えて便利になりました。
塗る面積が多い場合は塗料の一斗缶を利用し、持ち手部分を切って加工し容器にします。
空き缶を利用出来るので経済的で無駄もありません。
持ち手の加工方法は各職人の好みで様々です。
まとめ
外壁塗装で使う道具や用具の一部をまとめてご紹介しました。
私が若いころはこのような便利な道具が無かったり高価で使えませんでしたので、今の職人は贅沢だなと思ってしまいます。
また、便利な道具が無いからこそ技術でカバーしていた部分でも、道具がカバーしてくれるようになって羨ましいです。
便利な道具を使うことは、工事の品質アップや工程のレベルアップに繋がっているのは間違いありません。
そして道具や用具の使いこなし方のコツを職人同士でシェアすることにより、さらに工事の品質を向上させることが出来るようになります。
そんな中から塗料と道具の両方で、商品の品質を確認しながらより良いものを探して使わなければなりません。