ALC外壁(ヘーベルボード)とは
ALC外壁とは、工場で出来上がった複数のパネル(ALCパネル)で構成された外壁のこと。
(Autoclaved Lightweight aerated Concreteの頭文字を取った略称)
日本語に訳すと「高温高圧蒸気養生製法の軽量気泡コンクリート」になります。
多孔質化させた事で一般のコンクリートとは異なり何より軽いのが特徴。
強度・断熱性・耐火性にも優れていて、現代建築に欠かせない建材の1つとなっています。
パネルで構成される点はサイディング外壁と同じですが、一般的には「サイディング」とは呼びません。
ヘーベルとALCは同じ?違う?
「ヘーベル」は超有名なALCの商品名
- ヘーベル
- ヘーベルボード
- ヘーベルハウス
これらの名称は日本では旭化成のヘーベルハウスでお馴染みの旭化成ホームズ株式会社が売り出している商品・ブランドで、ALCの代名詞となっています。
そのため、ALC外壁のことを「ヘーベルの外壁」「ヘーベルボード」と呼ぶことが多いですが、実際は全てのALCが「ヘーベル」ではありません。
ヘーベル」の名前の由来は?
旭化成は1966年にヘーベルガスベトン社よりALCの技術を導入。
さらに日本の風土や敷地、地震が多いといった環境に合わせて改良を重ね、技術を蓄積することで独自のパネル構造を実現。
そして、ロングライフ住宅「ヘーベルハウス」が誕生したのです。
ALC発祥の地はスウェーデン
日本ではALCと呼んでいるものは、海外ではAutoclaved aerated concrete と呼ばれています。
(日本語訳ではオートクレーブ気泡コンクリートとなり、略称もALCでは無くAACです)
そこで世界のwikipediaでALC(AAC)について調べてみました。
ALC(autoclaved aerated concrete:オートクレーブ気泡コンクリート)の起源は、1920年代半ばにスウェーデンの建築家で発明家のヨハンアクセルエリクソン博士によって完成され、1929年Yxhult市で生産が開始されました。以降、世界で最初に登録された建築材料ブランドであるYtongになりました。
もう1つのブランド「Siporex」は1939年にスウェーデンで設立され、現在、世界中の35か所でプラントのライセンスを取得して所有しています。
2番目の主要な国際セルラーコンクリートヒーベルブランドは、メミンゲンの創業者であり技術者であるヨーゼフヒーベルに遡ります。。1943年、ドイツで最初のヘーベル工場が開設されました。
その後の世界のALC(ACC)
- Ytong社の軽量コンクリートは現在はドイツの会社XellaによってYtongという名前で販売されています。(出展:スウェーデン語版ウィキペディア「Ytong」)
- Siporex ABは軽量コンクリートを製造していましたが会社は現在閉鎖されているとのことです。(出展:スウェーデン語版ウィキペディア「Siporex」)
- ドイツヘーベル社では上記のようにEmmeringの工場で1943年から気泡コンクリートを製造し、その後Hebel AGとして分離された後、旧Preussag・Fels-Werkeに統合され、現在はXella Group に買収されています。(出展:ドイツ語版wikipedia「Josef Hebel (Unternehmen)」
- 最終的にドイツのXella Groupは、Ytong、Silka、Multipor、Hebel、Ursaの製品ブランドをまとめ、開発し続けています。(出展:ドイツ語版wikipedia「Xella」)
Xella Groupの各ブランドのロゴマーク
日本のALCブランド
ALC協会によると、日本でALCボードを販売している建材メーカー・ブランドは以下の3社です
ALC外壁のメンテナンスの特徴
外壁塗装を考える際のALCのメリット
ALCはサイディング同様、パネルの板間目地にはシーリングが充填されていて建物の揺れに追随します。
ですからモルタル外壁とは違い「どこにヒビが入ってしまうか分からない」といった事が無いのが、外壁塗装のメンテナンス上のメリットになります。
ALC外壁は「半永久的」は誤解
ALC外壁はサイディングと比較して厚みがあり、かつ特殊な構造のコンクリートを採用することにより耐火性・遮音性・耐震性全てにおいて効果を発揮するとされています。
メーカーは「サイディングに全てにおいて勝り張り替えも不要、半世紀・あるいは半永久的に工事不要」とまで謳っています。
ただ、この謳い文句を誤解して「メンテナンスフリー」と捉えてしまうお施主様も多いので、注意が必要です。
「半永久的」という単語に目を引かれがちですがこれは誤りです。
メーカーのアナウンスにも「塗り替えなど適切なメンテナンスをもとに張り替え不要と推定される年数で、保証値ではありません」とあります。
いかに丈夫なALC外壁でも、表面の塗装や目地シーリングの寿命の限界は15年です。
それ以上放置してしまうと紫外線や雨水によって雨漏りやALC素材の劣化や欠け、表面塗装の再生が不可になるなどの不具合が起きて来る確率がとても上がってしまいます。
ALC外壁は塗装と目地のシーリングが命
ALCは雨漏りしやすい?
ALC外壁が雨漏りしてしまうケースは、ほとんどがシーリング切れによるものです。
いくらALCの板が軽石のようであるにしても、外壁から染み入った雨水により漏水してしまう事は無いでしょう。
つまり、ALC外壁で雨漏りしてしまう場合は、屋上の防水の不具合以外のほとんどがシーリングの劣化によるものと言えます。
よくあるALCの雨漏り事例
よくあるALCの雨漏り事例では、外壁塗装を行った時にシーリングの劣化に対して【シーリングの増し打ち】で対応したケースです。
ALC外壁は60㎝×2.7mの板がメインです。
その為、シーリングで継ぎ目を埋めている長さが物凄く多いのも特徴です。
さらに、目地も深いので材料も沢山使います。
これを交換するには外壁塗装と同程度の予算が掛かってしまいます。
重ねるので大丈夫そうに思えますが、結局新しいシーリングが薄くしか付かないので早々に劣化してしまいます。
そうすると、工事した直後は「直った!」と喜んでいられるのですが3年~5年程度でまた雨漏りが始まってしまうのです。
ALC外壁のメンテナンスサイクル
ALC外壁を丈夫で長持ちに保つ為には、定期的で適切な外壁の塗装とシーリングの交換が必須です。
(同じ状況下でサイディングよりも少し持つくらいの感覚でいると、個人的には良いと思います。)
サイディング同様に目地シーリングは経年劣化しますが、サイディングパネルの厚みが16㎜程度なのに対し、ALCの厚みは35㎜~200㎜まであるので、シーリングの奥行き(厚み)が倍以上違います。
その為、サイディング外壁とは違い10年前後であれば必ずしも「シーリングの交換が必要ですね」とは言えないケースも多いのがALC外壁の特徴でもあります。
また、築20年を過ぎたら、全体の目地シーリングの打ち替え工事が必須となりますので、工事の見積もり段階で十分業者からの説明を受ける必要があります。
ALCの画像集
一般的なALC外壁(フラット)
一般的なALCボードは、1枚が縦2700㎜・横600㎜。
軽石のような、巣穴のある表面をしている。
ALC ブロック状外壁
ALCの製造時にフラット状では無く、あらかじめデザインを施したものもある。
ALC ブロック状外壁(正方形)
デザインは長方形や正方形のチョコレートブロック状の物が多い。
切れてしまったALCの目地
ALC外壁の防水性は目地が担っています。
サイディングに比べてALCの目地は大きく深いので耐用年数も長いのですが、打ち換えなければならない場合もあります。
写真のように目地が無くなっていると、室内で雨漏り現象が分からなくてもALCと室内壁の間(鉄骨の柱内)には雨が入り込んでいる可能性が高い。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は有名なヘーベルボードとALCボードの違いから始まり、その歴史やライセンス契約の経緯などの情報も盛り込み、とっとワールドワイドな記事になりました。
内容をまとめると以下のようになります。
ヘーベルハウスのお家もALCのお家も、外壁塗装の際にはシールの交換がキモですので、塗料の種類以前にシールのチェックをしっかりとしてくれる業者さんに依頼をするようにしましょう。