ケイカル板は【外部利用不可】…でも仕方なく使う場合の方法

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ケイカル板は【外部利用不可】…でも仕方なく使う場合の方法

この記事は下記のポイントについて書いています。

  • ケイカル板は本来外部に使用するようには作られていないこと
  • ケイカルを外部に使った失敗例
  • だけど現状仕方ないので使わざるを得ない理由
  • 代替品の例
  • 失敗しないでケイカルを塗装して外部に使えるようにする方法

ケイ酸カルシウム板(略してケイカル板)は、現在の住宅でもポピュラーな建材の1つです。

主に材木に代わる品として、軒裏天井や破風板・幕板(帯板)・窓枠の化粧板としてかなりの家で使われています。

さて、そんなケイカル板について、実は常々思っていた事が有ります。

それはケイカルは水に弱くて劣化が激しい建材」だという事。

そんな中でケイカル板に付いて調べていたら、どうやらケイカルは正規に外部用の材料では無いという事が分かり、個人的に晴天の霹靂だったので記事にしてみました。

目次

ケイカル板は木材よりは水に強いが、実際は雨水に弱い!

ケイカルは家の外部では破風板や帯板(幕板)に多く使われています。
(軒下にも使われますが、一応半外部扱いです)

破風板は家の中で屋根に次いで劣化が激しい場所です。

以前はその劣化が激しい場所に木の板を使っていて、塗装をしてもすぐに劣化してよく腐ってしまいました。

ケイカルは木材のようには腐食しません

ですから、ケイカルは良い材料だとも思えます。

ケイカル板の劣化の実例

…とは言え、下記のような劣化の状況を見たら、皆さんは木材よりも丈夫だと思えるでしょうか?

ケイカル破風板の3つの実例とケイカル外壁の2つの事例です。

ケイカル破風板の劣化のパターン【3実例】

ケイカル破風板のよくある劣化
  1. 全体的な劣化
  2. TVアンテナの取り付け部分の劣化
  3. パテの剥がれたケイカル破風板

① 全体的な劣化

全体的に劣化しているケイカル板の破風板です。

塗装が劣化して防水性能が失われてしまうと、塗膜を通り抜けてケイカル本体に雨水が浸み込んでしまいます。

するとケイカル本体の劣化が進んで削れていき、表面が凹んでしまいます。

Deterioration of the calcical plate

② TVアンテナの取り付け部分の劣化

破風板にはテレビアンテナを支えるワイヤーを固定する事が有ります。

そのワイヤーには、雨が降ると雨の滴が伝って来ます。

ですからワイヤーの根本は他の部分よりも雨に濡れるようになり、伝ってきた雨水によりケイカル板が劣化します

Deterioration of the calcical plate

③ パテの剥がれたケイカル破風板

ケイカルの劣化を早める原因は、施工不良にもあります。

ケイカル塗装の施工不良の代表が、このようなパテ部分の剥がれです。

新築時の下地処理でシーラーを塗っていない場合やシーラーを塗る前にパテ処理をすると、このようにパテごと塗装も剥がれてしまいます

むき出しになったケイカルは、そこだけ早く劣化してしまいます。

ケイカル板の劣化
ケイカル板の劣化

④ 釘を打ったところの劣化

ケイカル板を破風板として使う場合は釘で打ち付けて留めます。
打ち付けた釘の頭部分は少し凹んでしまい、厳密には傷んだ状態で取付けられています。

劣化条件の厳しい破風板部分ですから、経年劣化が進んでいくとその傷みが他の部分よりも早く悪くなってしまいます。

ケイカル外壁の劣化

ケイカル外壁の劣化
  1. 部分的な劣化
  2. 全面の劣化

① 部分的な劣化

ケイカル板を外壁材にしている家もあり、外装用の塗装をしても下記のように剥がれが起きます

家の外壁には、雨が多く通る場所が必ず出てしまいますから、雨水の通り道になる所には集中して劣化が訪れます。

新築時はしっかりリシン吹き付け仕上げを行っていても、雨の通り道では剥がれる部分が出ます。

Deterioration of the calcical plate

② 外壁ケイカル板の全面が劣化した例

これは、外壁全部がケイカル破風板状に劣化しているのと同じような事例です。

上記例はリシン吹き付け仕上げの外装なので、弱いところだけの劣化でした。

しかし、ケイカルを使ってデザイン性の有る外壁にしようとした設計士が建てたこの家の例が下記になります。

素敵なデザインは、目透かし状に凹んだ目地が有るフラット板の外壁です。

設計士さんは「他には無いデザイン」にしたいのでしょう。
一般的な厚みのある凹凸仕上げの外装材を使いたくないのは分かりますが、その結果がこれでは意味がありませんね…。

フラットの塗装で塗られたケイカル板の表面が全体的に劣化して、侵食されたケイカルは凹んでいます。

Deterioration of the calcical plate

ケイカルメーカーの資料には何と書いてあるのか?

ケイカルを作っているメーカーのホームページで度のような記載があるのかを調べてみる事にしました。

Web上の資料では以下のような記載があります。

岐阜県関市で建材などの加工と販売などをおこなっているトマト工業代表のブログ

トマト工業さんによると、ケイカルは「直接雨が掛からない外部」には使えるという記載です。

石膏ボードが苦手な場所、水回り、半外部などに使われます。

半外部というのは、直接雨掛かりしないものの、外気にふれるような場所です。

例えば、屋外のひさしの天井、駐車場の天井、マンションのベランダ隔壁板等です。

※「石膏ボードとは、ケイカル板とは、不燃建材の2トップについて解説してみた。より引用

せっこうボードの開発・製造・販売を行っているチヨダウーテ株式会社のホームページ

チヨダウーテさんでも同様ですね。表向きに「外部用」とは書いてありません。

灰質原料、けい酸質原料、繊維を主原料としたけい酸カルシウム板:チヨダセラボード

商品概要 : 戸建住宅、共同住宅の軒裏やビル等の間仕切壁、工場・倉庫等の内壁等に幅広く使用できます。
用 途  :  一般内装、軒天等

※チヨダウーテ株式会社ホームページ・チヨダセラボード製品情報ページ より引用

ケイカルを外部で使う際の失敗の原因

実際にケイカルの破風板が施工不良で塗装が剥がれているのはゴロゴロあります

無塗装品ケイカルを外部で使いうと、なぜこのような事が起きるのでしょう?

ケイカルを外部で使う際の失敗の原因
  • 現場の手抜き・無知
  • 設計士の失敗・デザイン優先
  • 破風板の経年劣化の見誤り(再塗装サイクル)
  • 予算不足

現場の手抜き・無知

施工不良になる原因は、上記でも触れましたが、新築時に適切な塗装(シーラー/下塗り)が出来ていないからです。

シーラー処理が正しく出来ていないケイカル板は、雨水に触れて内部の意劣化が進むと確実に剥がれてしまうのです。

そして、新築の現場監督はその事にまで気を配って無いのでしょう。

そもそも知らないのかもしれません。

設計士の失敗・デザイン優先

恐らく設計士さんも良く分かっていないのだと思える理由もあります。

何かと言うと、最近の新築で破風板にケイカルが使う場合、ほぼ100%「艶消し塗装」で塗られています。

なぜ艶消し塗装が悪いのかと言うと、艶消し塗料は平均的に塗料の寿命が短いからです。

設計の指示では「艶消し塗料で色は●●」という指定しかありません。

破風板の経年劣化の見誤り(再塗装サイクル)

特に外部で良く使われる破風板の塗装は、どの部分よりも経年劣化が早く訪れます
ですから、他の部分よりも早く再塗装をしなければいけません

塗装でケイカル板の表面を保護しても7年程度が限界です。
(艶有りのシリコン塗料を使った場合)

ですから本来は5年ごとにケイカル破風板は塗り替えるべきなのです。
当然、それだけのために足場を組む必要があります。

そのような塗装工事を行う家は無いでしょう。

足場を掛けて破風板を塗るチャンスが来るのは十数年後に外壁塗装をする時まで待たなければなりません。

ですから5年後以降の破風板のケイカルは、雨水を吸っていさらに劣化が進んで…剥がれてしまうのです。

予算不足

予算が無いので…と言ってしまえば何もかもおしまいですが、下記のようになります。

  • 予算が無いので外部用ケイカルが使えない
  • 予算が無いのでシーラーを塗らない手抜き工事をしなければならない
  • 予算が無いので正しい工事が出来る職人を呼べない

ケイカル板がグレーゾーンでも外部に使われている理由

さてここで、少し現実的にも考えてみます。

ケイカル板が破風板等の外部に使われる理由は、木材の破風板に比べて下記のデメリットがあるからです。

外装建材としての「木材のデメリット」とケイカル板に変更するメリット
  • 木材価格は高騰→ケイカルの方が安価
  • 木材資源の枯渇→ケイカルの方が豊富にある
  • 経年劣化により腐食する→腐食はしないが侵食していく
  • 塗装をしても剥がれる→最適な塗装を行えば剥がれない

昔の家は屋根以外の全ての建材が木製だったので、破風板やサッシの外枠が木製でも当たり前でした。

しかし上記の理由も有って次第に家の外部に木材は使われなくなったのです。

そんな時丁度上記の理由でケイカル板に注目集まり「これで良いのでは?」と思った建築屋さん達が次第に使い始めたのです。

ケイカルと似て非なる材料:フレキシブルボード(フレキ板)

ケイカルが今のように使われる以前から、似たような材料として「フレシキブル板」という建材がありました。

こちらは外装材としても使えるのですが、反面「重く・切りにくい」という物理的なデメリットがあるので、今でも使われる事はほとんど有りません。

また、過去にはフレキ板にもケイカル板にもアスベストが入っていました。

破風板にケイカル板を使う時の方法

ケイカルは、木材と似た重さと加工のしやすさと、安価であるというメリットで破風板に使われるようになりました。

しかし本来は雨水に当たって良いところに使うべき建材ではありません。

とは言え、現在ケイカルに代わる良い建材が無いのも事実です。

さてそれでは、どうしたら良いのか??というと…

破風板に使う外装建材
  • やはりケイカルでは無い素材を使う
  • 塗装済み・既製品の外部利用可能なケイカルを使う
  • 無塗装のケイカルを使い、極力劣化しないように塗装して利用する

ケイカルでは無い素材を使う

そもそもですが、ケイカルでは無い素材・建材とは材木では無く板金(金属)や樹脂製の建材を使えばケイカルより数段耐候性が良いです。

ハウスメーカーの家などでは、このような素材が使われている事が多いですが、その理由はやはり予算と信頼性のバランスでしょう。

また、こちらもそもそもですが、破風板部分をモルタルで作っている家もあります。

こちらはデザイン的な部分と、上記同様予算と信頼性のバランスになります。
(劣化への耐候性だけで考えると、軒裏も破風板もモルタルで作る方が長持ちします)

塗装済み・既製品の外部利用可能なケイカルを使う

2020年現在で本当に一番良い案としては、そもそも外装用として製品化されている建材を使う事です。

実は外装用の破風板や幕板(帯板)の商品があるので、それを使えば良い訳です。

破風板」とグーグルのショッピングサイトで検索すると下記のように色々な商品がある事が分かります。

ただし、身も蓋も無い話ですが予算の関係でこれらの製品が使われない事が多いのも事実です。

無塗装のケイカルを使い、極力劣化しないように塗装して利用する

最後にこちらが本題ですが、無塗装のケイカルを使い、極力劣化しないように塗装して利用する方法になります。

上記の建材を利用する予算があれば良いのですが、コストパフォーマンスとのバランスでそうも行かない場合がほとんどです。
その際に、どのような手順で仕上げれば良いかの手順を解説をします。

  1. STEP

    取付け方法

    ケイカルの取り付け方法は【ケイカル用ビス】を使い、2~3ミリ程度奥まで打ち込んでパテの厚みを確保する

  2. STEP

    シーラー塗装

    シーラーはケイカル用の専用品か、2液型の浸透性エポキシシーラーを塗る

  3. STEP

    パテ処理

    きちんと外部に使用可能なパテを使う事。

  4. STEP

    中塗り

    ここでいきなり上塗り塗装をすると劣化が早まるので、ここがポイントです。

    外壁のサイディング塗装をする時に塗るサーフェーサーを塗ります。

    この層を作る事で、雨水が下地のケイカルに届いてしまう事を防ぐことが出来ます。
    また、上塗り塗装との密着性能も上がり、塗料の厚みも直接塗る時と比較して厚く塗る事も出来るのです。

    この工程を加えるだけで、ケイカル塗装の表面寿命が格段に延びます。

  5. STEP

    上塗り

    最後に上塗り塗装を2回です。
    本来は艶有り塗料で塗るべきです。

    樹脂のグレードは2液型のシリコン塗料か2液型のフッ素塗料がオススメです。
    艶消し仕上げにしたい場合は外装用の艶消し塗料を使います。

破風板のケイカル限定の話題

特に破風板限定ですが「艶有り塗料を塗るべき」という記事を書きましたので、興味がある方は是非ご覧下さい。

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。

この記事では下記の点についてまとめてみました。

この記事の内容が腑に落ちて早めに今の悩みが解決すると嬉しいです。

興味がありましたら、この他の【ケイカル】関連の記事も読んで頂けると有りがたいです。

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この記事を書いた人

高橋良一のアバター 高橋良一 花まるリフォーム株式会社代表

塗装職人の2代目・職人15年・外装会社経営20年。塗料や塗装の知識・業者選び等…正しい情報を分かりやすく発信します。このサイトの目標は「誰もが適切な診断と良い工事が出来るようになる事」

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