この記事は、ネット記事の間違いについての指摘です。
外壁塗装職人の2代目で、塗装の技術や塗料の知識は全て体験談です。今は年間300棟以上の家を診断する外壁塗装の専門店を経営。記事は全部自分で書いているので、ライターが書いている他の記事とは正反対の「リアルな内容」も多め。(プロフィール)
見積りに塗料の缶数を書くのが間違いな理由
見積りに塗料の缶数を書くのが間違いな理由は、塗料の使用量が下地によって一定では無いからです。
外壁塗装の下地はフラットでは無く凹凸パターンが付いている事の方が多く、その下地の凹凸の付加さや量にによって塗料の使用量は結構変わります。
塗料の使用量は、塗ってみないとなかなか分かりません。
実際には適切な仕様量をピッタリ注文するのは難しいのです。
塗ってみないと分からない缶数を、契約上で決めてしまうデメリットの方が多いのです。
塗料の缶数を決めるメリット
缶数を決めたいのは、その事を分からない人たちです。
実際には塗装をした事が無い塗料を売る側の人です。
塗装のことを知らないでお客を集める事ばかり考えていると、たまにこういう変なノウハウが出回る事になります。
塗料を薄めて塗られたら困る」と思っている人
リフォーム会社の人は塗装のことをよく知りません。
塗料のカタログに【1缶当たり●●平米~●●平米の塗装が可能】と書いてあるのをそのまま受け取ってしまいます。
カタログを読めば「使用缶数を決める事が出来る」と思ってしまうかもしれません。
確かに上記のように、エスケー化研の水性セラミシリコンのカタログには標準使用量が書いてあります。
しかし、その下の注意書きの【増減】の部分は体感していないので、よく分からないのでしょう。
塗料を少しでも多く売りたい人
また、外壁塗装の依頼が出来るフランチャイズグループの中には塗料メーカー系のところもあります。
そうしたところは塗料を売るのが仕事ですから、余っても材料は売りたいわけです。
見積りに塗料の缶数を書く本当の理由は、消費者心理を突いたマーケティング
つまり、市民講座を行って集客している業者が良く使う手ですが
「外壁塗装で悪質業者に騙されないためのチェックポイントその①」
見積りに塗料の缶数を書く
と題して教えてくれることの1つです。
教わる身としては分かりやすいですので、疑う人はいないでしょう。
信じさせる事で、その後で工事の依頼を受けやすくする事が出来ます。
公共工事でやってるから
そして、その発想を利用して、いかにも「正しいやり方」のように見せるマーケティングは上手いと言った方が良いのか…
下記のデメリットについても同時に考える必要があります。
見積りに塗料の缶数を書くデメリット
メーカーカタログの塗料の使用缶数は、目安として使うのは問題無いのです。
見積りに塗料の缶数を書く事で起きるデメリットについてまで考えるのは…私くらいかもしれません。
見積りに記載した塗料の缶数では足りなくなったら…どうする?
この場合、見積り上記載の数量は塗っているので…
- 足りない分の塗装はしない
- 足りない分の塗料は追加費用を請求する
- 足りなくなった分は1回少なく塗っても良い(2回塗る所を1回しか塗れないところが出る)
まあ、1や2は無いでしょうから、結局のところ3になります。
材料が足りないので仕方ありません。
実際にこの場面に出会ってしまった事があります。
隣の現場で、職人さんが現場監督に「塗料が足りなくなった」と相談していたのです。
監督さんも「足場撤去までには塗料が間に合わない…」と困り顔でしたが、その後どうなったのでしょうか?
見積りに塗料の缶数を書く、そしてその缶数がフランチャイズや元請けリフォーム会社から支給されると、塗料が足りない時にはこのようなデメリットが起きてしまいます。
見積りに記載した塗料の缶数で余ってしまったら…どうする?
そんな事もしばしばあります。
この場合、見積り上記載の数量は塗れないので…以下のようになります。
- 余った分の塗料を使い切るまで塗る
- 余った分の塗料は差し引いて値引きする
- 余った分の塗料は、お客様にバレないようにそっと持ち帰る
まあ、1や2は無いでしょうから、この場合も結局のところ3になります。
きちんと適量を塗装しているので仕方ありません。
この場合の問題は、消費者心理と職人の残材管理の2つになります。
消費者心理と現実
消費者心理としては、使用予定量の塗料が搬入されているのに余っていたら「本当は塗っていないのでは?」と思ってしまうのではないでしょうか?
もちろん、職人側も手抜きと疑われるのは分かっているので、バレずに持ち帰るようにするのでしょうが…
とは言え、余った塗料は使い道がありません。
例え次の現場が同じ塗料の同じ色だったとしても、その家用の塗料が入荷してしまうからです。
余った塗料は昔だったら「土に埋めた」とも聞きましたが、今は産業廃棄物として有料処分でしょう。
エコでもないし、全くの無駄づかいになってしまいます。
見積りに塗料缶数を記載しない実際の工事のやり方
一律の使用量では無いのは分かっているので、下地の凹凸加減から予測をして「たぶんこの程度で足りるだろう」という缶数で塗料を注文します。
その量で足りる事もあれば、足りない事もあります。
足りない場合は、下塗りの段階で予測が付くので追加の発注をかけます。
余ってしまっても使用量を明示していないので特に問題はありません。
余ったてしまった塗料の使い道
※余った塗料の使い道については、市民講座に行くと、こう教えてくれます
「外壁塗装で悪質業者に騙されないためのチェックポイント…その②」
「中塗りと上塗りの色を変えて塗ってもらう」
塗料の水増し手抜き工事をされる心配について
塗料の水増し手抜き工事をされる心配については、別記事で書いています。
結論だけここに記載しておくと、塗料を薄めて塗る手抜きは、実際には出来ません。
というか、現実的には手抜きとして成立しません。
手抜きの方法は、薄める他にあるからです。
まとめ
というわけで「見積りに塗料の缶数を書く事」が必ずしも正解というわけでは無い、と思っている事を書いた記事でした。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事では下記の点についてまとめてみました。
この記事の内容が腑に落ちて「見積りに塗料の缶数を書く」ことに意味が無いと思って頂ければ嬉しいです。
興味がありましたら、他の【外壁塗装と手抜き工事】関連の記事も読んで頂けると有りがたいです。