「下塗り」を塗る意味は1つではありません。
下塗り塗料には主に以下のような役割があります。下塗り塗料の持つ役割
- 密着性(下地と仕上げ塗装との接着剤の役割)
- 吸い込み止め(上塗り塗料が下地に吸い込まれてしまうのを止める役割)
- 下地調整(クラックを埋め、下地の凹凸を減らして平らにする役割)
- 錆止め(鉄が酸化してサビてしまうのを防ぐ役割)
今回は下塗り塗装の4つの役割の3番目「下地調整」について解説します。
下塗りによる下地調整とは?
下塗り塗料で行う下地の調整というのは主に「下地の凹みを埋め、平らにする」のが目的です。
下地の凹みには大きく3種類、大きな凹み・小さな凹み・表面の小さな凹み、があります。
また、平滑過ぎる面の塗装下地の場合に、若干の凹凸を付ける事もあります。
大きな凹み・クラック(ヒビ割れ)の解消
「下地の大きな凹みや段差」が起きるのは、主にモルタルの外壁です。
ヒビ割れやクラックが凹みになります。
下塗り塗料がこれらの凹みに入っていき、亀裂を埋めて段差を解消します。
一般的に「フィラー」と呼ばれる塗料が、このカテゴリーになります。
フィラー塗装の注意点
フィラーの塗装では正しく粘度の調整を行うことが重要です。
手抜き業者はフィラーを薄めて塗ります。
薄め過ぎたフィラーでは、塗料の基本性能が悪くなります。
ヒビ埋め効果が極端に悪くなり、密着力も弱まって後で剥がれる可能性が高まるのです。
また、塗り継ぎが出て塗装後のムラが目立つ原因にもなり得ます。
どのコースで塗り下がって行くのかを計算して塗らないと綺麗に仕上がらない可能性が出ます。
小さな凹み・下地の劣化による段差の解消
「下地の小さな凹みや劣化による段差」が起きる場所は、主にサイディング外壁や外壁以外の付帯部(ケイカルの破風板など)です。
一般的に「サーフェーサー」と呼ばれる塗料が、このカテゴリーになります
サイディングの平らな面の細いヒビ割れ・劣化によりサイディング板自体が剥がれてしまった部分や、付帯でも同様な劣化が起きた場合に、段差を埋めながら剥がれた部分の表面保護を行います。
サーフェーサーは窯業系素材に適した素材や組成で出来ています。
具体的には接着力が強く、粒子が細かいのが特徴です。
似てはいますがフィラーで代用する事は望ましくありません。
表面の小さな凹み・段差の解消
「表面の凹み・段差」が起きる場所は、主に内装壁や鉄扉・手すりなどの鉄部・新規の木部塗装の下地などです。
- 主に内装用で下塗り後に塗る中塗りの塗料を「バインダー」と言います
- 鉄部に塗る「錆止め」には多少厚みがあり、塗膜の段差を解消する効果もあります。
- 新しく木部に塗装する場合には、木目の凹みや巣穴に入り込んで段差を解消します。
これらの小さな凹みや巣穴に入り込んで下地を平滑にする塗装工程も、下地調整材の役割です。
平滑過ぎる下地の場合
塗装したい下地の調整は、必ずしも凹みの対処だけとは限りません。
下地が平滑過ぎても上塗り塗料が滑ってしまう(薄くしか塗装出来ない)のです。
上塗り塗料の厚みを適切に付けないと、綺麗に仕上がりません。
そこで、下塗り材を塗って「適切な厚みや凹凸を付ける」ことで、上塗り塗料の塗り厚を確保します。
この場合の塗料は、専用塗料が無くおおむね内装用の艶消し仕上げ塗料を流用します。
使い勝手が良いのは【日本ペイントのケンエースG-Ⅱ】です。
一般的には凹みを平らにする処理を「下地調整材」の役割としています。
ただ、よく考えると凹凸を付ける事も「下地調整」になるので、この項目に入れておきます。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございました。
下地調整材(下地調整用塗料)について要点をまとめておきます。
下地調整用塗料には大きく3種類ある
- 大きな凹み…【フィラー】モルタル外壁に使う
- 小さな凹み…【サーフェーサー】サイディング・破風板などに使う
- 表面の小さな凹み【バインダー・錆止め・木部用下塗りなど】各種平滑面に使う
- 平滑過ぎる下地【専用塗料なし】微細な凹凸を付ける
それぞれの下地に適した塗料を選ぶ事が重要