雨漏りを見つけてしまうと、誰でもビックリし心配になります。
まさか我が家で雨漏りになるなんて…とてもショックな事ですよね。
- 家が傷んでしまう
- 傾いてしまう
- 住めなくなってしまう
- 柱が腐ってしまう
こんなことが頭をよぎり、慌てて雨漏り修理の業者を探すことになるのかもしれません。
ですから外壁塗装の仕事をしていると「雨漏りの相談」も受けることが多くなります。
そんな雨漏りのご相談を頂くときに「あらかじめお伝えしておくこと」がこの記事の内容です。
ですから結論は、簡単な補修では雨漏りの根本原因までは直せない…ということです。
以下の内容は木造住宅の雨漏り修理についての考え方です。
(鉄筋コンクリート造や鉄骨ALC造などには当てはまらない部分が多いので、ご注意ください)
雨漏りを直す解体工事とは?
雨漏りを直すことは、実はすごく簡単です。
外壁や、室内側の壁・床・天井などを剥がしていけば、必ず原因が分かるからです。
これが雨漏り修理をする時に必要な基本の考え方で、ここを押さえないで雨漏りを直そうとすると間違ってしまいます。
しかし、業者は誰もそんな事を言いません。
良かれと思って、費用の掛からない確実性の低い対処方法で直そうとしてしまいます。
「雨漏りを直す工事」には、必ず解体が必要です。
なぜ解体が必要で、そうしないと雨漏りを直したことにならないか?について、最初に解説をします。
雨漏り=有ってはいけないことが起きている
「雨が漏っている」ということは、建物にとってあってはならない異常事態です。
有り得ないことが起きている…と言ってもよいでしょう。
有ってはいけないことが起きている訳ですから、簡単には直りません。
そして、その「あり得ないこと」を「あるべき元の姿に戻す」には【手術】が必要です。
決して絆創膏では直りません。
家に手術を施すには「解体」が必要ですが、誰も解体を伴う修理工事まではしたくないもの。
なぜ解体が必要なのか?を解説します。
雨漏りの原因は防水シートの切れ
木造住宅の場合、雨漏りが起きる原因は、外壁にはありません。
モルタル外壁であっても、サイディング外壁であっても、外壁の内側に防水シートがあり、それが漏水を防いでいるからです。
- 一次防水:外壁の外側(外壁素材や塗装)で雨水の侵入を防ぐこと
- 二次防水:外壁の内側(防水シート)で雨水の侵入を防ぐことを
※二次防水が決壊すると雨水が室内に漏ってくる
「雨漏り修理」は、雨漏りの原因を解消すること
つまり、雨が漏っている場合には、必ず【外壁の内側=見えないところ】で穴が開いているわけです。
その【外壁の内側=見えないところの穴】を塞ぐには、外壁が邪魔になります。
外壁を剥がし、雨漏りの根本原因である「外壁の中の防水シートの切れ」を直さないと、雨漏りは直せないのです。
防水シートが切れて雨漏りしてしまう原因
では、なぜ防水シートに穴が開いてしまうのでしょうか?
原因は主に下記の3つです
① 設計ミス
(素材の耐性に頼りすぎた耐候性を無視した設計)
主に設計士に依頼すると多くなるケース。
無理なデザインの設計をすると、耐水性に時限爆弾的な劣化が起きやすくなります。
② 新築時の工事の不備
(手抜き工事と言わないまでも、耐候保護的に不十分な施工)
設計士に依頼したり注文建築でオリジナルデザインの家を建てる場合に起きるケース。
デザイン優先で雨漏りしそうな設計の場合でも、実際の施工で何とか雨漏りしないように出来る職人さんもいます。
しかし、経験の少ない職人が工事を手掛けた場合には、そこまでは気が廻りません。
普通の設計の家であれば、普通レベルの職人の工事でも雨漏りする家にはなりません。
結局は、素敵なデザインや雨漏りを考慮していない設計・材料選びが経年と共に時限爆弾のように雨漏りを誘発してしまいます。
③ メンテナンスの遅れによる経年劣化
(外壁塗装の時期の著しい遅れ・劣化部分の放置)
適切な設計と施工による家でも、メンテナンスを怠れば劣化が進んで雨漏りに繋がります。
特に多いのはサイディング外壁の目地の劣化です。
サイディング外壁は、一見何もしなくて良いように思えてしまいます。
しかし、10年以降でつなぎ目の目地が切れてしまい、その亀裂からサイディングの内側に雨水が入ってしまいます。
目地の亀裂はモルタル外壁のひび割れと比較すると、とても大きいヒビと同等かそれ以上です。
サイディングの亀裂の奥に防水シートは常時雨水で濡れていくので、いつか破れてしまいその雨水が室内に漏れるようになります。
雨漏りの保証は10年
上記の原因のうち、設計ミスと施工の不備については新築時に原因があり、築10年以内の雨漏りであれば施工の保証(瑕疵担保保険)で修理を行えます。
しかし、保証・保険の期間は10年で打ち切りになるので、10年目以降の雨漏りだと保証では修理してもらえません。
雨漏りへの現実的な対処の方法
雨漏りの相談がある場合、皆様が安価な「雨の入り口を埋める/塞ぐ工事」を想定されています。
ですから…その工事の内容だと雨漏りは直らない」とう現実を伝えると、当然ですがガッカリされる事が多くなります。
それは承知の上で伝えるようにしています。
その上で、これからどのように対応していくか、現実的な案を考えていく必要があります。
実際には3つの案があります。
- 雨漏りを完全に修理する方法【解体】
- 雨漏りを止められないが、試しに補修をしてみる【シール補修】
- 雨漏りの様子をしばらく見る現実案【With雨漏り】
ではこの3つの対処方法について解説していきます。
① 雨漏りを完全に修理する方法【解体】
雨漏りを直すにために、なぜ「解体」が必要なのかを解説しましょう。
その理由は2つ。
- 雨漏りの原因を突き止めるため:室内側の解体が必要
- 雨漏りの原因を止めるため:外壁側の解体が必要
では詳しく解説していきます。
本格的に修理する:外壁を剥がして雨漏り修理をする
外壁を剥がして雨漏り修理をする場合は簡単です。
ただし、そのような状況になるには下記の条件が揃う必要があります。
- 築10年を過ぎ、新築時から雨漏りしている
- 建設会社で雨漏り対応してきたが、全く直らない
(建設会社が倒産してもうない) - 結局10年間雨漏りを放置してきたが、もう限界…
- なので費用は掛かっても綺麗さっぱり直したい
このような条件の場合には、室内側の壁のシミやカビも結構あって「解体への抵抗感」は全く無く、
当然という理解ですんなり進みます。
室内側の解体も必要な理由
実際に雨水が漏ってしまった場合、経路の天井や石膏ボードに雨染み汚れが付きます。
また、裏側にある断熱材にはカビが発生しているでしょう。
「汚れやカビは気にしない」という方もいるかとは思いますが、基本的には雨漏りの痕跡が残る部分は交換が必要になります。
つまり、遅かれ早かれ雨漏りに関係している室内の壁は取り換えることになります。
内装の解体で分かること・出来ること
内装の壁を剥がすと下記の事が分かります。
- 壁材の交換
- 断熱材の交換
- 壁の内側の劣化の状況の確認
- 壁の内側の劣化状況により補強ができる
- 雨水の経路が分かることがある
- 散水調査を行うと、雨水の通り道がある程度分かる
雨水の入り口や原因が必ず分かる訳ではありませんが、室内の壁や天井を剥がしてみると雨漏りの原因のヒントが分かる事があります。
雨漏り修理で外壁の解体が必要な理由
雨漏りの原因…つまり穴を塞ぐには、外壁の解体が必要です。
外壁の解体を行えば雨漏りの根本原因の「穴」を塞ぐことができます。
外壁を解体する工事まではしたくない…
しかし、外壁を解体するのはかなり大掛かりな工事になります。
その部分の工事だけで、おおむね50万円前後は掛かると覚悟をしていた方がよいでしょう。
(足場や塗装などは除いた金額です)
そんな大掛かりな(費用の掛かる)工事は誰もしたくはありません。
雨漏り修理で、外壁を剥がすなんて有り得ない…
しかし残念ながら「雨が漏っている」ということは、最初にも言った通りで…
有り得ない事が起きてしまっているのは、とても残念なことです。
しかし、どの家でも雨漏りが起きている訳ではなく、ほかの家では有り得ない事が起きているからこそ…雨が漏ってしまうのです。
有り得ない事を元に戻すには、有り得ない(考えたくない・やりたくない)工事をしなければならない。
この理由を納得出来ない気持ちはよく分かります。
しかし、雨漏りを直すには「外科手術」が必要で、それにはメスを入れて直すしか方法がありません。
② 雨漏りを止められない【シール補修】
さて、ここまでの「雨漏り修理工事」とは、「雨漏りを止めたい」「雨漏りしないような工事をして欲しい」という要望に対しての工事を念頭に置いています。
ですから堅いことを言って「解体しないと雨漏りは止められない」という話になっています。
「簡単には雨漏りは止められない」のですが、逆に言うと解体を伴う工事を行えば「必ず雨を止める」ことができるようになります。
(ただし、費用は掛かります)
しかし、お客様の要望は「費用を掛けずに、簡素な工事で雨漏りを簡単に止めたい」というもの。
この場合の工事内容は主にシーリング工事(コーキング)で雨の入り口を埋めたり塞いだりすることです。
その内容の工事は簡単で安価ですが、解体を伴う工事とは違います。
そしてほとんどの場合、雨漏りが止まりません。
さらに、応急処置なので雨漏りの根本原因を直せません。
なので、見える部分(触れる部分)への対処(シーリング/コーキング)では、雨漏りが直るか直らないかの保証ができない、というわけです。
雨漏りのコーキング補修を何回しても直らない理由については、下記の記事でも詳しく解説しています。
試しに埋める補修をしてみる(雨漏りが止まる精度は低くても…)
ここまでの話で、簡単にヒビや隙間などを埋めても直らないのはとりあえず分かっていても…
その上で「試しに埋める補修」をしてみる
…という選択肢を選ぶ方法です。
ただし、当然ですが雨漏りが止まる精度はかなり低くなります。
実際に内外壁を解体して本格的に雨漏り修理をするには、10年間我慢しなければその気になれないものです。
それまでの間は仕方がないので、直らないとは分かっていながらも対応していくしかありません。
この場合は、補修後の経過観察が重要になります。
その手順は下記の記事が参考になるでしょう。
③ 現実的な案【With雨漏り】という考え方
そして執筆時、2020年のコロナ禍では「Withコロナ」という言葉も生まれました。
それに引っかけているのですが「With雨漏り」という造語を考えてみました。
つまりこういう事です。
実際には「様子を見る」のには違わないのですが、漠然と様子を見ようと思っても不安が募ってしまいます。
そこで、雨漏りが引き起こす影響の経過を観察しながら判断材料を増やして様子を見ていくのです。
雨漏りがあると最初に心配になってしまう下記の不安…
- 家が傷んでしまう
- 傾いてしまう
- 住めなくなってしまう
- 柱が腐ってしまう
これらが、特に大きな不安要因にならないのが確認出来れば、慌てる必要がありません。
With雨漏りの方法
With雨漏りでは、雨漏りの状況を確認することが大切です。
それには「見えない部分」を見えるようにして確認できるようにすれば良いのです。
一番簡単な方法は「点検口」を付けて、壁や天井の奥を見れるようにすること。
雨が漏ってシミが出来た部分や、漏ったところに一番近い部分の奥を観察できるようにするのです。
雨の出口付近の下地を観察することで、下記の確認ができます。
- どの程度まだ放置していても大丈夫か?といった判定ができる
- どの程度の酷さになったら本格的な工事をしなければならないのか?が確認できる
雨が漏ったからと言って、すぐさま家が崩れる訳ではありませんが、とにかく劣化しているところが見えないと不安が拭えません。
見えて確認が出来れば、劣化の進行が分かります。
下地の濡れ具合が確認できれば、そのような雨だと漏る・漏らないの状況把握にも繋がります。
雨漏りはしない方が良いですが、それに驚き・心配し過ぎるのも良くないものです。
ですから、雨漏りの相談で伺った際には下記の①か②のパターンになる事が多くなります。
(③のパターンはほとんどありません)
- 雨漏りの状況を見て・経過などをお聞きし、今後どのように考え・対応していったらよいのかのご相談
- 雨漏りとは関係ない外壁塗装のお見積り
- 外壁を剥がして本格的に雨漏りをしないようにする工事
まとめ
この記事では、雨漏りが起きてしまってからの対処方法についてまとめてみました。
- まずはとても残念なお知らせにはなりますが、雨漏りは基本的に簡単には直りません
- 完全に直す方法は簡単で、内外壁共に解体し切れている防水シートを復旧すること
(ただし費用が掛かる) - 外壁表面の雨の入り口を塞ごうとしても、根本的な解決には繋がらない
(でも、無理だと分かっていれば何度か試してみるのも良い) - 現実案としては「with雨漏り」で、雨漏りの状況を確認しながら経過観察をして様子を見るのがおススメ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事の内容が腑に落ちて早めに今の悩みが解決すると嬉しいです。
興味がありましたら、他の【雨漏り】関連の記事も読んで頂けると有りがたいです。