外壁の汚れの中には、北側だけが緑色に汚れることがあります。
外壁の気になる汚れの中でもトップ3に入るこの汚れの正体は、地衣類と言う菌類と藻の共生生物であるコケの一種です。
コケが生える主な原因は、家の向きや風通し・樹木などの環境が1つ。
そして外壁塗装の種類によってもコケが育ちやすくことも多くなります。
家の周囲の環境は変えられませんが、外壁を塗り替える時の塗料選びでコケの生えにくい外壁に変えることも出来ます。
(コケ汚れが目立って来る頃にはちょうど築10年を過ぎて外壁塗り替えの時期と重なります)
ただし、ここで注意したい事が1つ…
そこで今回は、コケの生えた外壁を塗り替える時のポイントや注意点について解説をしていきます。
その点も注意して読んでもらえれば、塗料選びの失敗も無く満足いく外壁の塗料選びが出来ますので是非参考にしてください。
せっかく外壁の塗替えを行うなら「今度はこのようなコケの生えないような外壁にしたい」ですね。
地衣類(ちいるい)は一般には「こけ」と呼ばれます。
地衣類ってなに?(千葉県立中央博物館)
菌類の仲間が,藻類(そうるい)と共生して一つの体を作っているのです。
外壁にコケが生えやすい理由
外壁にコケが生えやすい一般的な理由には2つの要因があります。
- 家の立地や周囲の環境面
- 外壁の状態や素材
それぞれについて具体的な要因を挙げてみましょう
家の立地や周囲の環境面によるコケの発生理由
家の建っている環境により、コケの生えやすい家と生えにくい家があります。
下記のような環境だと、コケが生えやすい傾向にあります。
- 雨が降ると濡れる外壁面
- 北側の日陰面・風通しが悪い
- エアコン室外機などの近く
- 樹木が近くにある
- 畑や農園が近くにある
雨が降ると濡れる外壁面
上記画像では、2階にも1階にもコケが生えていますが、1階の上部にはコケが生えていません。
この理由は、2階との区切り部分に出っ張りがあり、傘の役割を果たしているからです。
1階のコケが生えている高さが揃っている事から、少量の雨の場合に雨で濡れない部分があることが分かります。
また、窓の下や電気メーターの下もコケが生えていません。
こちらの方が不思議なくらいコケの有る無しがハッキリしています。
同じ面でもこのように雨で濡れる場所と濡れない場所でコケの生え方が違うのです
北側の日陰面・風通しが悪い
家の北側には太陽が当たらず、降雨後に濡れた外壁がなかなか乾きません。
湿気が乾かない状況はコケの育ちやすい環境になります。
また、家の北側は隣接地との境界を広く取らないので風通しも悪くなりがちです。
エアコン室外機などの近く
エアコン室外機は外壁に寄せて置かれている事がほとんどです。
その天板の上に雨水が落ちると、接している外壁に跳ねた水が掛かります。
画像のようにエアコン室外機のそばの外壁にコケが生えているのは、よく見られる光景です。
樹木が近くにある
北側の外壁では、画像のようにお隣の植栽が境界側に植えられている事も多いもの。
植物は根から水分を吸収し、葉や幹(茎)からの蒸散作用によって水分を放出しています。
ですから、雨が降っていない日でも植物の近くでは霧吹きのように水分が放出されていて、コケが育ちやすくなるのです。
畑や農園が近くにある
上記画像の例での経験になりますが、市民農園の隣面の外壁ではコケが生えやすくなります。
この外壁は西面で開放的な環境ですし、植物の蒸散作用と言っても低い作物ばかりです。
このような市民農園では「一般の土」とは違い、肥料の沢山混じった栄養価の高い土になっています。
その土埃が外壁に付くとコケも生えやすいので、育ちやすくなります。
外壁の状態や素材
廻りの環境だけでなく、外壁の状態や素材によっても、コケの生えやすい家と生えにくい家に分かれます。
下記のような環境だと、コケが生えやすい傾向にあります。
- 外壁が劣化している
- コケが育ちやすい素材の外壁材
- ジョリパット・リシン吹き付け
- 塗り壁(漆喰系)
- コケの生えやすい外壁…モルタル外壁で【ジョリパット】や【リシン吹き付け】などの艶消し塗装の外壁
- コケの生えにくい外壁…サイディング外壁・モルタル外壁でも艶有り塗装で塗り替えた家
- ほぼコケの生えない外壁…金属外壁・タイル外壁
コケの生えやすい【艶消し外壁】とは?
コケの生えやすい外壁は艶消し外壁です。
艶消し外壁の特徴をまとめると以下のようになります。
- 表面に石の粒がある(ザラザラしている)
- 触ると痛い
- 水を掛けると染み込んでしまう
- 汚れやすいという誤解がある
- チョーキング現象が起きない
- コケが生えやすい
実は都内近郊で建っている新築住宅では艶消し外壁の方が多い気がします。ですからコケが生えているのが気になって外壁塗装を検討する方は今後も増えていくと思います。
では、コケの生えやすい「艶消し外壁」の代表的な2種類の塗料をご紹介しましょう。
コケの生えやすい艶消し外壁 ①ジョリパット
コケの生えやすい艶消し外壁 ②リシン吹き付け
艶消し外壁にコケの生える理由
では、艶有りの外壁と比べて艶消しの外壁には、なぜコケが生えやすいのかを簡単に解説しましょう。
艶消し外壁の特徴は、「石粒と塗料」が混ざっている点です。石粒と石粒の間には若干巣穴があり、雨水が奥に浸透します。浸透した水分は「呼吸をするように」出たり入ったりします。
よく、水を弾かないと雨漏りしてしまうのでは?というご質問を受けます。
しかしそうであれば今建てている新築で採用されることは無いはずですね。
実際には壁の中に入っている透湿防水シートとの組み合わせによって防水の設計が考えられています。
(外壁にヒビが入ってもすぐ室内に雨漏りしないのは、この防水紙のおかげです)
コケの生えにくい外壁
結論は既にお伝えしてありますが、コケが生えにくい外壁は「サイディング外壁」と「艶有り塗料で塗り替えた外壁」です。
コケの生えにくい「サイディング外壁」
コケの生えにくい「艶有り塗料で塗り替えた外壁」
モルタル外壁の場合、その上の吹き付け仕上げの選択で【艶あり】と【艶消し】を選べます。
現在一般的には【艶消し】のジョリパット・リシン吹き付け外壁がほとんどですが、少し前の建物では基本的に雨水を弾く【艶有り】タイプが流行っていました。
このタイプの外壁だと、外壁に雨を含まないのでコケの生えにくい外壁でした。
モルタル外壁艶有り仕上げの種類
モルタル外壁で雨水を弾くタイプの塗装には下記の種類があります。
- 吹き付けタイル外壁(大粒・小粒)押さえパターン/吹き放しパターン
- フラット
- ゆず肌
- マスチック(砂骨ローラー)パターン
- その他
下記写真を参考に、ご自宅の外壁がそもそも艶有り外壁だったのかを確認してみましょう。
吹き付けタイル(押さえ柄)
雨水を弾く「防水型」の吹き付け塗装の代表格です。
20年~30年くらい前に大流行しました。
「タイル」と言っても「磁器タイル」とは別物です。
吹き付けタイル(吹き放し柄)
吹き付けの粒を小さく調整した小粒柄。
基本は「押さえ柄」と同じです。
コケの生えやすい艶消し外壁を生えにくくする解決策
コケの生えやすい外壁を生えにくくするための解決策は1つ。
その他細かい点でコケを生えにくくするポイントは以下のような事もあります。
- 風通しを良くする
- 外壁の廻りにある植木を撤去する
- エアコン室外機を外壁から離す(場所を移動する)
コケの生えにくい外壁に変更した時の注意点
コケが生えてしまった外壁を塗り替える際には、いくつかの注意点があります。
それは、艶消し外壁のメリットを捨ててしまう事にもなるからです。
では、そもそも艶消し外壁のメリットとは何だったのか?
あらためてここで確認しておきましょう。
艶消し外壁のメリット
艶消し外壁のメリットには以下のものがあります。
後悔の無いように、念のためおさらいしておきましょう。
- 艶消しの風合いが良い
- 高級感がある
- 全体がボンヤリ汚れるので、実は汚れが気にならない場合もある
- 雨水が全部流れないので、窓枠の下ばかり汚れることが少ない
艶有り外壁のメリット
では逆に、艶有り外壁のメリットとはどんなものがあるのでしょう。
こちらもきちんと確認しておきましょう。
- 雨水を弾く
- コケが生えにくい
- 洗浄機等があれば洗える
- 雨で汚れを洗い流せる
- 壁が輝いて気持ち良い
- 色にメリハリが付きくっきりする
このように艶有り外壁の魅力は、何と言っても雨水を弾き染み込ませない事です。
4-3・艶有り外壁に変更した時に今までと変わってしまう事
そして老婆心ながら、艶消し外壁を艶有り外壁で塗った後で変わってしまう部分もお伝えしましょう。
ここまで理解しておけば、後はどちらかのメリット・デメリットを考慮して後悔の無い選択が出来るでしょう。
- 太陽が当たるとキラキラ・ピカピカと壁が光って見えるようになる。
- 雨水で外壁は洗われるが、窓枠の下には雨の汚れ筋が付いてしまう。
- 光線の具合によって、壁の陰影が目立つようになる(塗装ではなく、モルタルの凹凸ムラが目立つ場合がある)
以上の3点が艶消し外壁から艶有り外壁に変わった時に「今までと違う!?」と気が付く部分です。
これらの部分を知っておけば安心です。
5・まとめ 選択肢は2択:コケを取るか風合いを取るか?
いかがでしたでしょうか。
築10年~15年程度の外壁塗替えを検討される時期のお家では、ジョリパットを使った艶消し外壁のお家が多いようです。
環境によってコケが生えてしまうお家もあれば、すぐ隣のお家では全く生えていない・・・といったこともあります。
このコラムは実際に花まるリフォームで塗り替えをご検討されているお客様にお伝えすることをまとめてあります。
この部分までお伝えして、後はお客様のご判断でどちらの艶で塗るかをご検討頂きます。
その結果、艶有り外壁に変更して塗り替えられる方は以下のような感じです。
- コケが生えるのが何が何でも嫌な方
- 外壁がピカピカした感じになっても、あまり気にならない方
逆に艶消し外壁を再度選ばれる方は以下のような感じです。
- どうしてもピカピカした外壁が嫌な方
- また10年程度でどうせ塗り替えるのだから、今までと同じ風合いが良い方
コケか?風合いか?
どちらを取るかの2択で選んで頂くようにはなりますが、ここまでお話しするときちんと納得して選ぶ事が出来るのではないかと思っています。
是非参考にしてみて下さい。