この記事では、2011年から遮熱塗料を塗ってきた実績や実証実験のデータをもとに、遮熱塗料のメリット・デメリットを含めて解説します。
遮熱塗料は効果を大袈裟に言って、高額な見積りをする業者もいるので注意が必要です。
実際には一般の屋根塗料を塗るのと比較して無料~5万円前後の値上がりなら許容範囲でしょう。
5万円の追加であれば、「もし遮熱塗料を塗っていたら涼しかったかも…?」と後悔することへの保険だとしてもリーズナブルです。
個人的には遮熱塗料を塗るのが断然お勧めなのですが、適切な期待度と費用のバランスを考えて選択出来るように書いてあります。
2009年から5年間にわたり遮熱塗料の実証実験を行ったデータをとても詳しくまとめてあります。
興味がある方は、下記のリンク先から見てみて下さい。
遮熱塗料のポイント
最初に、これから解説する遮熱塗料のポイントと注意点をまとめておきます。
解説が長いので、この「まとめ」だけ見て理解できれば、以下の解説は読まなくても大丈夫です。
- 遮熱塗料は屋根に塗る
- 屋根の表面温度は最大でマイナス11℃以上
- 室内の温度は体感でマイナス2℃程度
- 遮熱塗料は明るい色で効果が出る(色によりJIS規格がある)
- 2階建てよりも3階建てに効果が出る
遮熱塗料の注意点
- 遮熱塗料は外壁に塗っても効果は薄い
- 色が濃いと効果が薄い(ほとんど無い)
- 遮熱塗料には誇大広告が多い
- 実際に電気代が安くなるかどうかは想定不能
上記のポイントを踏まえ、1つ1つ解説していきます。
遮熱塗料とは?
遮熱塗料は一般の屋根塗料とは違い、太陽光を反射させる塗料です。
一般塗料との違いは、塗料中の「色の成分」である顔料です。
太陽光の中の「近赤外線」を反射する顔料を使っていて、屋根表面の温度上昇を防ぎます。
遮熱塗料の体感効果
遮熱塗料を塗ると実際に室内温度はどのくらい下がるかは、平均でマイナス2℃程度。
これは… 都内近郊で最も一般的な【木造2階建・スレート屋根】の場合では37℃の日に、35℃くらいに感じることが出来る、といったところです。
マイナス2℃の体感効果の実際
実際には37℃もあればエアコンなしでは熱中症になってしまいます。
遮熱塗料の効果を体感することなくエアコンを付けてしまうでしょう。
ですから、効果を体感したい場合はエアコンを付けずに実験…はする必要はないですね(笑)
それなりに涼しく感じる事が出来る方もいますので、 期待のハードルをあまり上げなければ納得できるハズです。
注意したいのは誇大広告
遮熱効果の問題点は、誇大広告です。
何でも広告は盛って言いますが…遮熱の効果には広告ほどのものは期待してはいけません。
実は先の「涼しくなった感想」も誇大広告に利用されがちで危険なのです。
「お客様の声」は催眠術効果かも?
例として出しておいて申し訳ありませんが、朝日を反射した時の温度差でそれほど劇的に差が出るとは思えないというのが私の感想です。
過大な期待は高価格・期待外れの元
お客様がそう感じて下されば「それはそれで良い」のですが、その感想の劇的な部分は広告として使われてしまいます。
その「生の声」で過大な期待を持たせれば、期待に伴って価格も跳ね上がる事になります。
正しい効果(価値)を適正価格で提供しないと、遮熱塗料の評判事態に悪影響を及ぼしかねません。
遮熱塗料と一般屋根塗料の価格差
屋根の塗装では遮熱塗料を標準にするのがオススメと言っても、費用が高過ぎては意味がありません。
ここでは一般屋根塗料と遮熱塗料の費用の比較を検討してみます。
各メーカーから出ている【設計価格表】を元に比較表にして見ました。
実際の工事単価とは違いますが、価格差の目安として参考に出来ます。
詳しくは下記の記事で書いていますのでご確認下さい。
遮熱塗料の効果が出やすい家・出にくい家
遮熱塗料には効果の出やすい家と、効果が出にくい家のパターンがあるので解説します。
遮熱効果の出やすい家の4パターン
- 金属の屋根
- 吹き抜け天井
- 3階建て
- 2階にリビング
遮熱効果の出にくい家の4パターン
- セメント瓦・モニエル瓦など厚型瓦の屋根
- 天井裏の小屋裏空間や屋根裏収納がある
- 南面の屋根に太陽光パネルが載っている
- 最上階を使っていない
ちなみに、遮熱塗料を塗ると「冬の太陽光まで反射して寒くなるのでは?」
…というご質問をよく頂きますが、遮熱塗料を塗ると冷たくなるという事は無いので冬場の影響はありません。
遮熱塗料は、なぜ屋根だけ?
遮熱塗料を「屋根に塗る」理由
遮熱塗料は屋根に塗らないと効果が得られません。
屋根は遮るものが無く、特に夏は真上からガンガン日差しが当たります。
それを反射させることで、白いTシャツと黒いTシャツで暑さが違うように屋根の温度が変わるのです。
屋根の表面温度が違えば、階下に伝わる熱も違ってきます。
この部分で屋根の素材により「遮熱塗料を塗った時の効果が家ごとに違う」という注意点が出てきます。
外壁用の遮熱塗料は効果が期待出来ない
外壁には屋根ほどは直射日光は当たりませんので、屋根の10分の1程度の効果しか得られません。
塗料メーカーの邪魔をしたいわけではありませんが、外壁にはいくら反射率の高いスーパー遮熱塗料を塗っても効果が出ない理由を解説してみます。
- 外壁は最大で2面しか太陽に当たらない(2面は日陰になる)
- 日が当たる外壁(南面)には窓が多く、外壁がそもそも少ない
- 南面にはバルコニーがあり、1階南面の外壁には日差しがあまり当たらない
- 隣家に日差しを遮られる事も多いので、外壁に直射日光が当たる家が少ない
- 外壁は元々薄い色が多い(黒い外壁もありますが…)
上記を踏まえると、外壁に太陽光が当たるのは以下の部分です。
- 朝方の東面
- 日中の南面2階
- 夕方の西面
「西日がきつく暑い」ので、西側の外壁だけ遮熱塗料を塗ったら良いのでは?という方もいましたが、
遮熱塗料の効果を得るなら色はグレーが良い理由
遮熱塗料として戸建て住宅の屋根に塗る色はグレーがベストです。
- 遮熱の効果が高い
- 汚れにくい
- 紫外線劣化の耐候性が許容範囲
- 見た目の違和感が少ない
- 新築で採用されているので今後増えていく
遮熱の効果は色でも出せる?
実は、遮熱塗料を塗らなくても太陽光を反射させる事が出来ます。
白い色で屋根に塗れば良いのです。
白いTシャツと黒いTシャツで暑さが違うように、黒い屋根と白い屋根では屋根の温度が全然違います。
白い屋根が無い理由
ただし、一般の屋根用塗料では白い色がありません。
なぜかと言うと、白い色は紫外線に弱く劣化が激しいので、屋根に白い色を塗っても長持ちしないからです。
ですから、遮熱塗料に白系は有りますが、屋根用の一般塗料には白系はありません。
遮熱塗料のJIS規格
遮熱塗料にもJIS規格があります。(JIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料)
以前は統一した規格が無く、効果の怪しい塗料や添加剤もありましたが、平成23年7月20日にこのJIS規格が定まったおかげで怪しい遮熱塗料・エコ塗料類を判定しやすくなりました。
遮熱塗料の効果は色によって違いますので、同じ遮熱塗料でも効果の出る色と出ない色があります。
(JIS規格ではその部分を考慮して、日射反射率を色相別に3段階に分けてあります)
JIS K 5675を取得した塗料一覧
JIS K 5675 2種(溶剤系塗料)
メーカー | 塗料名 |
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エスケー化研株式会社 | クールタイトF |
日本ペイント株式会社 | サーモアイ4F |
水谷ペイント株式会社 | 快適サーモF 快適サーモSi |
スズカファイン株式会社 | ワイドエポーレFクール |
メーカー | 塗料名 |
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エスケー化研株式会社 | クールタイトSi |
日本ペイント株式会社 | サーモアイSi サーモアイUV |
関西ペイント株式会社 | アレスクール2液Si |
スズカファイン株式会社 | ワイドエポーレSiクール |
大日本塗料株式会社 | エコクールマイルドSi エコクールスマイルSi |
メーカー | 塗料名 |
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スズカファイン株式会社 | ワイドエポーレUクール |
JIS K 5675 1種(水系塗料)
メーカー | 塗料名 |
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スズカファイン株式会社 | クールトップSiスーパー |
メーカー | 塗料名 |
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スズカファイン株式会社 | ワイドエポーレクールシリーズ |
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事では下記の点についてまとめてみました。
この記事の内容が腑に落ちて早めに今の悩みが解決すると嬉しいです。
興味がありましたら、他の【遮熱塗料】関連の記事も読んで頂けると有りがたいです。