この記事では、遮熱塗料の性能基準である【日射反射率】の数字の読み方について解説します。
結論からいうと「各社の数値を同じ尺度でそのまま比較する事は出来ない」となります。
とは言え、遮熱塗料を塗っている面と塗っていない面とでは明らかに温度上昇が抑えられることは確かです。
日射反射率は遮熱塗料にとって重要な数値なので、正しく判断するためにも分かりやすく情報提供をしています。
ちなみに「日射反射率って?」という場合は下記の記事を読んで頂いてからの方が理解しやすいと思います。
色によって日射反射率は違う
白いTシャツと黒いTシャツで体感温度が違うように、白い屋根と黒い屋根では表面温度が全然違って来ます。
ある意味、屋根を涼しくしたいなら「明るい色・白っぽい色」を塗れば遮熱塗料でなくても効果は出ます。
色は白と黒だけでは無いので、各色でどの程度の効果があるか分からないと選びようがありません。
「遮熱塗料」が生まれてしばらくは、統一した規格が無かったため、メーカーが言いたい放題の効果を謳っていた時代もありました。
それでは困るため、JIS規格を定めて「太陽光を反射する数値の計算方法」に決まりを作りました。
そのベースになるのが下記の表です。
JIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)の表
このように遮熱塗料のJIS規格でも、色による日射反射率が違う事を考慮しています。
下記の表はJIS K 5675(屋根用高日射反射率塗料)にて定められた【遮熱塗料として認められる範囲】です。
具体的には一定の明度での反射率を出しそれ以上の反射をする塗料を遮熱塗料として認めるというものです。
上記の図で言うと、上のブルーの領域まで反射する塗料が遮熱塗料で、下段のピンク色の部分は一般の塗料になります。
- 横軸は【暗さ-明るさ】のメモリ
- 上に行くほど(100に近いほど)太陽の光を反射出来るので、熱くなりにくい
- 下にあれば(0に近いほど)太陽の光を反射しづらく、吸収して熱くなりやすい
- 縦軸は太陽光を反射する【日射反射率】のメモリ
- 左側の明度が0~40の暗い色は太陽の光を反射しづらく、吸収して熱くなりやすい
- 右側の明度が80~100の明るい色は太陽の光を反射しやすく、熱くなりにくい
遮熱塗料でなくても明るい色は太陽光を多く反射する
この表の目的は「各明度段階によって、遮熱塗料として認められるブルーの部分をどの反射率からにするか」と言うものですが、逆に下段に目を向けると一般塗料でもピンクの領域までは太陽光を反射する事が出来るという証明にもなります。
遮熱塗料で選べる色の範囲
各メーカーの屋根用遮熱塗料には、濃い色から薄い色まで選べるようになっています。
メーカーの方と話していると意外と保守的な事もあり、遮熱塗料だからと言って思い切って濃い色を無くしてしまう事は出来なかったようです。
ここで、カタログ資料が分かりやすい水谷ペイントの快適サーモシリーズのカタログを引用して解説をします。(以下図表などの引用崎:http://www.polyma.co.jp/products/roof/thermo/index.html)
各色番号に対応する表は下記になります。
⑩サーモN6グレーは、日射反射率72.7で明度は60.5です。
また、これから解説する
⑫サーモブラックは、日射反射率41.6で明度は25.1
⑬ニューサーモブラックは、日射反射率55.1で明度は24.6
遮熱塗料の色と日射反射率のポイント
遮熱塗料の色と日射反射率のポイントは3つです。
- 熱塗料の反射率と一般塗料の反射率を比較する
【遮熱塗料を塗らない方法で対応するかの検討】 - 遮塗料内で選べる色による反射率を比較する
【黒にするか、グレーにするかの検討】
遮熱塗料の反射率と一般塗料の反射率を比較する
まず遮熱塗料の反射率と一般塗料の反射率を比較します。
- 明度V2.5(25)の黒色の一般塗料の反射率は5%程度(遮熱塗料のJIS所得の場合は40%以上)
- 明度V6(60)のグレーの一般塗料の反射率は20%程度(遮熱塗料のJIS所得の場合は60%以上)
- 明度V95(90)の白色の一般塗料の反射率は67%程度(遮熱塗料のJIS所得の場合は80%以上)
この結果から、JIS規格を通る黒い色の遮熱塗料で塗るのと、明度80程度の一般塗料で塗るのでは反射率が同程度(45%くらい)だと分かります。
引用元:https://www.toryo.or.jp/jp/anzen/reflect/reflect-info2.pdf
塗料内で選べる色による反射率を比較する
上記の図に解説を加筆したのが下図です。
ポイントは3つの色…⑩N6グレー(明度が25程度)と⑫サーモブラック・⑬ニューサーモブラック明度が25程度です。
⑫サーモブラックと⑬ニューサーモブラックの比較
⑫サーモブラックは新品の屋根の【黒】を遮熱塗料の基準に合格出来るように調合した色だと思います。
⑬ニューサーモブラックはよく見たら濃紺ですが、屋根に塗ってあるのを見たら「黒」に見えます。
つまり、黒い顔料は反射率が低く紺色の方が反射率が高いので、反射率を高く出来るわけです。
ニューサーモブラックは、水谷ペイントの技術開発陣が「黒に見えて日射反射率が50%を超える塗料」を作ろうとしたのだと勝手ながら推測します。
⑩N6グレーと⑬ニューサーモブラックの比較
⑩N6グレーは反射率72%で⑬ニューサーモブラックは55%です。
この場合は少々悩ましくなります。
なぜかと言うと、頑張って反射率を上げて作ったニューサーモブラックですが、見た目の変わり映えが無いためかもしれませんが…涼しく感じる方がほとんどいません。
それに引き換え、N6グレーを塗った方の中には涼しくなったと感想を下さる方がいらっしゃいます。
各社の遮熱塗料反射率の比較
ここまで来たので、各社のカタログから反射率を表にしてみました。
反射率 | 一般塗料 | 水谷ペイント 快適サーモSi | 日本ペイント サーモアイSi | エスケー化研 クールタイトSi |
---|---|---|---|---|
85% | サーモホワイト | クールホワイト | スノーホワイト | |
70% | V9(90) 【白】 | N6グレー | クールライトグレー | マルーンベージュ |
55% | V8(80) | ニューサーモブラック | クールブラック | グレー |
40% | サーモブラック | スレートブラック | ||
35% | V7(70) | |||
25% | V6(60) 【グレー】 | |||
5% | V5(50) 【黒】 |
ここからは、各メーカーでの比較検討をしてみます。
実は、結論は、カタログデータの数字を各メーカー共通だと思っていると、実は結構違います」
各塗料メーカーによる日射反射率の数値
上記表にまとめた各メーカーの日射反射率の数値は、塗料カタログに記載してあります。
るものですので、実際に見てみましょう。
水谷ペイント 快適サーモSi
日本ペイント サーモアイSi
エスケー化研 クールタイトSi
各社の遮熱塗料の効果を比較する実証実験について
さて、各メーカーのでカタログデータの数字を各メーカー共通だと思っていると、実は結構違います」
という件ですが、その理由をお伝えします。
なぜかと言うと全般的に数値の良い日本ペイントですが、私が行った遮熱塗料の実証実験の結果ではあまり成績が良くありません。
1位と2位は水谷ペイントとエスケー化研です。
この事から、公表値と実情の違いや、控えめなデータと盛ったデータがあることが分かります。
遮熱塗料の実証実験は2009年から2014年まで5年間行いました。
興味がありましたら、下記からご覧頂ければと思います。
遮熱塗料の効果を自分で計測した実験のデータ
2009年の遮熱塗料実証実験の結果
2010年の遮熱塗料実証実験の結果
2011年の遮熱塗料実証実験の結果
2012年の遮熱塗料実証実験の結果
2014年の遮熱塗料実証実験の結果
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事では下記の点についてまとめてみました。
この記事の内容が腑に落ちて早めに今の悩みが解決すると嬉しいです。
興味がありましたら、他の【遮熱塗料】関連の記事も読んで頂けると有りがたいです。