外壁の隙間を埋める「コーキング(シーリング)」には、ペンキ同様に多くの種類があります。
このコーキングが「シリコンコーキング」だった場合、その上に塗装をすると後で剥がれてしまいます。
剥がれて特に目立つ場所は、ベランダの廻りの「手摺や笠木と外壁との隅(隙間)」です。
ここが剥がれてかなり目立つと、工事の手抜きか施工不良だと思ってしまい、塗装業者にクレームを言いたくなります。
あらかじめ分かっていれば納得も出来ますが、理由が分からないと不満や後悔が残ってしまいます。
この記事を読ん、仕方が無い理由が納得できればと思います。
シリコンコーキングの上に塗った塗料は後で剥がれる
この記事を書いた理由は「これを説明しておかないと後でモメるから」です。
そもそも、外壁に塗装出来ないと分かっていてシリコンコーキングが使われているのです。
塗装が剥がれてしまう原因はシリコンコーキングを施した職人にあります。
塗装職人に責任はありません。
誰かがシリコンコーキングを使った時点で、いつかそこを塗りたくなる時に塗装が出来なくなるトラブルが発生してしまう事がの元が出来ます。
そして、何故かそのツケが塗装業者に廻ってくるのです。
申し訳ありませんが、外壁塗装の時にそれが分かっても既に遅いのです。
塗装が剥がれた時の対処方法
- 塗装が剥がれて来たのを発見したら、思い切って剥がしてしまいましょう。
- そして、中身のシリコンコーキングの状態を確認します。
- 弾力性が有ってシリコンコーキング自体にヒビが入っていなければ、問題は有りません。
コーキングの上の塗装が剥がれても、雨漏りに繋がったり、何かが劣化する要因になったり、という事は特にありません。
塗装の剥がれは後でトラブルの種ですので精神衛生上良くありませんが…
剥がれた塗装に対する気の持ちよう
上記でも下記も書きましたが新築時からシリコンコーキングは存在していて、次に外壁塗装をした後で剥がれてしまうのは決まっていた事です。
ただ、もしもどうしても嫌ならシリコンコーキングを撤去し、塗装出来るコーキングに交換してから塗装するしかありません。
その方法は下記の3つがあるのですが、あまり現実的ではありません。
シリコンコーキングの手前までしか塗らない
ただし、大抵の外壁には凹凸があり、綺麗に塗装の見切りを付ける事が出来ません。
また、マスキングがきちんと出来ないので、塗料が垂れた時にも綺麗に見えません。
シリコンコーキングの撤去
現状付いているシリコンコーキングを綺麗に撤去する事が出来れば、理論上は可能な案です。
シリコンコーキングの周囲ごと撤去
こちらはもっと現実的ではないですが、理論上は可能です。
…まぁ有り得ませんよね。
シリコンコーキングは便利だが塗装が出来ない
コーキングの役割・種類
コーキングとは、家の隅々を雨漏りから守ろうとする時に必要な材料で、建物の気密性や防水性を維持するために必要です。
ホームセンターで売っているのは主に【変成シリコンコーキング】と【シリコンコーキング】です。
シリコンコーキングの特徴は【くっ付かない】ところ
2種類あるうちの【シリコンコーキング】は、室内のお風呂の隅や、キッチンの角にも施してあるゴム状の充填剤です。
シリコンコーキングの特徴の1つに【非粘着性】があります。
つまり、シリコンコーキングが施してあると、その上には何も付きません。
この「くっ付かない特性」は、シリコンコーキングの長所でもあり短所にもなっています。
この特性のため、ペンキだけで無く、マスキングテープも接着材も…とにかく何もかもが付かないので困った事にもなってきます。
シリコンコーキングを使うメリット
「そんな事になるならシリコンコーキングなんて使って欲しく無かった」と思われるかもしれません。
しかし、これから説明する「シリコンコーキングのメリット」を知る事で、「後でペンキが剥がれるデメリット」の事は仕方ないと諦める事が出来るでしょう。
そんなシリコンコーキングですが、とても良い特性も有ります。
シリコンコーキングの長所には【熱に強い・水に強い・長持ち】という性質が有るいので、家の外部で雨水が入らないように埋めたい時にはとても便利なの材料なのです。
また、透明なコーキングはシリコンコーキングしかありませんでした。
電気やインターネットの配線関係などの工事で家の外部を貫通させるところ等でちょっと埋めたい時に「外壁がどんな色でも透明のコーキングさえ持っていれば、目立たないのでどこにでも使える」というメリットもあり、よく使われています。
(※今は一部のメーカーで変成シリコンの透明がありますが、シリコンの方が安価というメリットもあります)
シリコン素材のメリット
コーキング以外にも多くの用途で使われているシリコンの特徴を調べてみると、詳しく書いてあるサイトがあったので引用させて頂いた。
- 耐熱性:高い耐熱性を持つ。最高で250℃近い環境下でも変化することなく使用できる
- 低い熱伝導率:熱が伝わりにくい性質を持つ
- 熱安定性:高い熱安定性を持つ。-100℃から250℃といった広い温度範囲で特性が変わらない
- 撥水性:水をはじく高い撥水性を持つ
- 電気絶縁性:高い電気絶縁性を持ち、幅広い電気用途に使用できる
- 耐候性:酸素やオゾン、紫外線などに対する高い特性を持つ。コーティング材などでの利用にも適している
- 化学反応性:低い化学反応性を持ち、性質が変わらない
- 低毒性:毒性が低い
- ガス透過率:室温25℃の環境かで、酸素などのガス透過性に優れる
- 非粘着性:ほとんどの素材にくっつかない特性を持つ
シリコーン型としても多用される所以。ただしガラスにはくっつきやすい性質を持つ。
シリコン素材のデメリット
上記のサイトからシリコーン素材のデメリットは下記になります。
- 非粘着性:ほとんどの素材にくっつかない特性を持つ。(長所でもあるが、用途によっては短所になる)
- 強度:引張り強さや、引き裂き強さなどでは劣る
- 耐磨耗性:耐磨耗性でも劣る。
シリコンとシリコーンの違い
蛇足になりますが…ここまでシリコン・シリコンと呼んでいるのですが実はシリコンとシリコーンは別物で、シリコンコーキングもシリコン塗料も、正確にはシリコーンコーキング・シリコーン塗料と呼ぶのが正しいのです。(シリコンは元素名:ケイ素で、その化合物がシリコーンです)
シリコーンとはシリコーン工業会
バルコニー廻りにはシリコンコーキングが多い
そんな便利で丈夫で安価で安全で…素晴らしいシリコンコーキングですが…塗装が出来ないデメリットがあるにもかかわらず、バルコニー廻りにはシリコンコーキングが使われている可能性が高いのです。
手摺笠木と外壁の接点
アルミ笠木が外壁と接する部分の隙間を埋める部分にはシリコンコーキングが使われている事が多いです。
開口部の笠木と壁部分の接点
上記と似ていますが、バルコニーの外側の腰壁に開いている開口部の笠木部分の両端に使われているコーキングもシリコンが多いです。
床のデッキ材と床壁との接点
デッキ材の床になっているバルコニーで、立ち上がり部分との隙間を埋めているコーキングにもシリコンが使われています。
シリコンコーキングが使われている可能性のある家の外部
シリコンコーキングは下記のような家の様々な場所で既に使われている可能性があります。
- ガラスとアルミサッシ廻りのコーキング
- 出窓の屋根部分の継ぎ目
- 電話線を引き込む時に固定するビス穴の廻り(インターネット用の光ケーブルなども同様)
- 各所の補修工事用に開けたビス穴の廻り
- 大小・換気フード廻り
- エアコンの配管カバーの廻り
シリコンコーキングに塗装をしなければならない理由
では、そんなシリコンコーキングの上になぜわざわざ塗装をするのか?を解説します。
- 壁の塗料を塗り下げて行った時にシリコンコーキングの部分を塗らないようにしたいのですが…
- シリコンコーキングの上にマスキングテープを貼ろうにも、テープもくっ付きません…
- そこで、実際の工事ではどうするかと言うと、シリコンコーキングの外にマスキングテープを貼ります
- 外壁と一緒にシリコンコーキングも塗装をします
- シリコンの上に最初は塗装が載らず弾いてしまいます
- 何度か塗り重ねていくと、外壁とマスキング側の端との間で塗装が載って行きます
- 本当はシリコン部分にはくっ付いていないのですが、一応塗装が出来ているようになります。
そして、数年後にその部分の塗装は剥がれてしまう「可能性」が有ります。
この現象を詳しく解説している理由
塗装が剥がれても、中のシリコンコーキングが切れる訳ではありません。
その時に「よろしく無い事」というのは、塗ったものが剥がれてしまう事、だけです。
塗装業者としては「塗ったものが剥がれる」というのは、他の場所ならば「よろしく無い事」になります。
ですから「塗るけれども剥がれる場所」について業者としてはあらかじめ施主側にも理解して頂く必要があるのです。
他の場所なら剥がれてもほとんど目に付かない場所や小さい部分だけなので、気にならないのです。
ベランダ廻りのシリコンコーキングは結構量も多く・目の触れる場所なので、このようにあらかじめお伝えしている訳です。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
少々マニアックな話題ですが、実はほとんどの家で起こりうる現象ですので記事にしてみました。
この記事では下記の点についてまとめてみました。
この記事の内容が腑に落ちて早めに今の悩みが解決すると嬉しいです。
興味がありましたら、他の記事も読んで頂けると有りがたいです。