今回の記事は、遮熱塗料を塗る時の色について【グレー】がお勧めです、という内容です。
白いTシャツと黒いTシャツで体感温度が違うように、白い屋根と黒い屋根では表面温度が全然違って来ます。
ある意味、屋根を涼しくしたいなら明るい色・白っぽい色を塗れば遮熱塗料でなくても効果は出ます。
遮熱塗料はその効果をさらに高めるための【補足】といっても良いのです。
その証拠に、現在建てている新築分譲住宅で「省エネ・遮熱仕様の屋根」としている家は全て屋根がグレーです。
「省エネ・断熱」のための遮熱塗料ですから当然なんですね。
この記事ではその詳しい説明や、なぜ白ではダメなのか?なども解説していきます。
遮熱塗料が分からない方は下記の記事から先に読んでみて下さい
遮熱塗料で屋根の色をグレーにするメリット・デメリット
屋根の色をグレーにすることでメリットは多いですが、多少のデメリットもあります。
また、素朴な疑問もあると思いますので、以下に【メリット→デメリット→素朴な疑問】の順で解説します。
メリット・デメリットを確認して理解した上で、屋根の遮熱塗料の色をグレーにするか他の色にするかを検討しましょう。
グレーの遮熱塗料で塗るメリット
- 一般の屋根用塗料でも、黒よりグレーの方が反射率が高く涼しくなる
- 遮熱塗料を塗った時の効果が、黒や白より高い
- 色落ちが目立たない
- 見ただけで涼しそうになる【催眠効果】
では、詳しく説明します
一般の屋根用塗料でも、黒よりグレーの方が反射率が高く涼しくなる
ここは説明するまでも無いかと思いますが、黒より白の方が屋根自体が熱くなりません。
太陽からの光の熱に変わる近赤外線を吸収・反射する割合が色の明るさによって違うからです。
(なぜ今の屋根が黒く、白では無いのか?についてはこの後の項目で解説します)
熱くなるのが分かっている黒ではなくグレーで塗り替えれば、それだけで屋根の表面温度が最大で15℃程度は低く抑えられます。
遮熱塗料を塗った時の効果が、黒や白より高い
一般屋根塗料を塗った場合よりも遮熱塗料が涼しくなるのは、太陽光を反射する効果が得られる素材(顔料)を使っているからです。
ただし、どの色も均一に反射率が上げられる訳では無く下記の表のように反射率の変化に差が出ます。
データでは一般塗料を遮熱塗料に変えた時の反射率の差が表されています。
- 黒系は38%の差
- 白系では5%しかありません。
- グレー系だと45%の差です
引用元:https://www.toryo.or.jp/jp/anzen/reflect/reflect-info2.pdf
色 | 遮熱塗料の 反射率 | 一般塗料の 反射率 | 遮熱塗料の 反射上昇率 |
---|---|---|---|
黒系 (明度30程度) | 7% | 45% | 38% |
グレー (明度60程度) | 20% | 65% | 45% |
白系 (明度95程度) | 80% | 90% | 5% |
この表から、若干ですが黒系よりも遮熱塗料にした時の差=効果が高くなるのが分かります。
遮熱塗料のデータについては下記の記事で詳しく解説しています。
色落ちが目立たない
2006年に塗った時の黒系の屋根
上記屋根の11年後の状態(2015年)
2017年にはグレーの遮熱塗料にて塗り替え
屋根の汚れは「真っ黒」というよりはグレーに近いので、汚れは黒や白より目立ちにくいです。
- 黒い屋根は経年劣化で色あせをして、濃いグレーになっていきます
- 白い屋根は全体に薄く汚れて、薄いグレーになります
黒で塗っても白で塗っても、グレーに「変化」していきます。
始めからグレーだと、塗りたての時とその後の色に変化が出た時の差がほとんど出ません。
見ただけで涼しそうになる【催眠効果】
「催眠効果」という表現が適切かは分かりませんが、「思い込み」といっても良いかもしれません。
そもそもこのサイトでは、遮熱塗料にした時に「涼しくなる」とか「省エネ・節電」とかが理由で選びましょうとは言っていません。
遮熱塗料に対する期待や効果については【5万円の追加であれば、「もし遮熱塗料を塗っていたら涼しかったかも…?」と後悔することへの保険】だと思っています。
遮熱塗料の価格については下記記事で詳しく解説しています。
「涼しくなった!」も「全然涼しくならない」という感覚もそうですが、「涼しそう」かどうかも主観です。
ただ、暑苦しくは見えないはずで…グレーの屋根はきっと涼しげに見えるはずです。
と言うのは、実際に何度反射率が55%の黒い塗料を塗っても「涼しくなった」という感想は無く、反射率56%のグレーの塗料を塗ると「涼しくなったよ!」という感想がもらえるのです。
どう考えても理屈に合わず、おかしいのですが…
とは言え、この絶対的な数の感想に異を唱えても仕方がありません。
感じてしまうものは感じてしまうのです。
ですから、今回のグレー推しの最大の要因は(小学生がお母さんに話すみたいですが…)
「だって、みんなが言ってる」
という多数決的な調査の結果なのです。
屋根の色をグレーにするデメリット
- 今までの色と変わるのが嫌
- 外観がぼんやりする(メリハリが無い)
- 塗料の劣化がやや早い
- 既存の配色に合わなくなる場合がある
今までの色と変わるのが嫌
今までと同じ色の遮熱塗料で塗るのがお勧めです。
色のイメージの大切さ度合いは人によって全く違います。
ご家族の中でも一人ずつ違って当たり前です。
屋根の遮熱塗料に関しては、最上階を使う人の快適性と建物外観のイメージが天秤に掛けられることが多くなります。(後は費用的なもの)
グレーがダメな場合は現状の色が濃い事がほとんどで、薄い色全般がダメな事が多いでしょう。
この部分を考慮しつつ遮熱塗料の黒系を塗る方も沢山いらっしゃいます。
黒系で塗ること自体に問題は無いですが「知らなかった」では済まされないので、よく考えて色を決めるようにして下さい。
エスケー化研のホームページ 【塗り替えシミュレーション 戸建住宅2】より
(屋根と付帯部の色以外は変えていません)
新築時のイメージ(黒系の屋根)
塗り替えでグレーの屋根に変更
外観がぼんやりする(メリハリが無い)
これは(個人的にですが)はグレーの屋根にした時のの決定的な欠点だと感じていましたが…しだいに慣れました。
ただ、間違いなく「ふわっ」とした印象にはなってしまいます。
…が、しつこいようですが、その見た目も「涼しく見える要因」の一部であるなら、必ずしもデメリットでないのかもしれません。
塗料の劣化がやや早い
塗料の劣化の目安は「チョーキング」です。
チョーキングは塗料をこすると手に付いてくる現象の事ですが「塗料の表面が風化して取れてしまうこと」と言い換えても良いでしょう。
その風化の速度が色によって違う事はあまり知られていません
この事は直射日光を浴びる屋根の塗装色にとっては重大な部分です。
ですから、塗装寿命のことを考えて、屋根の場合は暑くなるのは分かっていても寿命を考えて黒が使われてきたのだと思います。
白い色の屋根にしない塗料の性質上の理由
夏の暑さの事を考えれば屋根の色は白い方が良い事になります。
黒と白の寿命は、2倍程度違うのが私の体感です。
新品の屋根材もメーカーの工場で塗装しています。
その屋根材の塗装が5年から7年程度で劣化してしまったら、屋根材メーカーでもクレームになってしまうでしょう。
屋根材のメーカー、ケイミューでは遮熱グラッサシリーズにて白系のグラッサクールホワイトという色を出しています。
明度が68程度:日射反射率45%程度なので、数値からすると随分控えめです。
カラーベスト 遮熱グラッサ
既存の配色に合わなくなる場合がある
新築時のイメージ(ブラウン系で統一)
塗替えイメージ(屋根だけグレー系)
新築時の設計デザインには配色も考慮されている事が多いもの。
特にサッシが黒でその他の装飾枠も黒かったりすると、屋根も黒でないとバランスが取れない事があります。
特にアクセント色として玄関廻りなどにタイルが貼ってあると、その色基調に合わせないといけないのでグレーの屋根が浮いてしまう事もあります。
しかし、ここに関しては涼しさを手に入れることとして、割り切るしかありません。
先ほどの話がに戻ってしまうようですが、屋根の色に多少の違和感があることでも「遮熱塗料が効いているに違いない」という思い込みが生まれます。
遮熱塗料の色に関するQ&A
メリット・デメリットの項目とは少々違った「素朴な疑問」にもお答えしておきます。
グレーにすると、汚れが目立つのでは?
屋根の汚れは「真っ黒」というよりはグレーに近いので、汚れは黒や白より目立ちにくいです。
- 黒い屋根は経年劣化で色あせをして、濃いグレーになっていきます
- 白い屋根は全体に薄く汚れて、薄いグレーになります
屋根の汚れの大半は「北側のコケ」です。
屋根に生えるコケの色は、天気の良い日には茶褐色や黄褐色に見え、雨が降ると緑色になります。
屋根の汚れの実際
もはや元々が何色だったか分からなくなっていますが、屋根を洗浄すると元の色が出てきます。
多分、この下地がグレーだったとしても、あまり関係が無いと思います。
グレーの屋根はあまり見かけないのでイメージが分かりません
残念ながら「イメージが出来ない」という場合には、どうにも出来ません。
カラーシュミレーション画像を作っても、最終的には塗り終わって足場を外すまで「どのように見えるか」は分からないからです。
過去の事例ではグラフィックデザイナーの方は「イメージした色になった」とおっしゃっていました。
色を取り扱うプロでないと、難しいのです。
一般の方の場合シミュレーションの通りの色で塗っても、その画像と実物とが「同じに見えない」現象が起きます。
ですからイメージ通りの色にしようという難問に挑むよりも「どんな色になるのかはお楽しみ」と思う他ありません。
天気の良い日に屋根を見上げると、反射して黒なのかグレーなのかあまり分からない
実際に塗ってみると分かるのですが、日中に屋根を下から見上げると太陽光で屋根が反射して光って見えます。
黒い屋根なのかグレーなのか、よく分からない事の方が多いものです。
(曇っている日には「グレーだな」とよく分かります)
確かにグレーの屋根はまだ多くはありません。
↑
遠くで見るとイマイチ分かりませんが
拡大するとグレーだと分かります
↓
前半のまとめ
だいぶ長くなってしまったので、前半部分をまとめておきます。
今一度、遮熱塗料をグレーで塗るメリットは…
- グレーは黒より屋根の温度が熱くならない
- 遮熱塗料の中でも反射率の幅が一番高い
- 色の変化が少ない
- 見た目が涼しそうなので、涼しくなった気がする
一方デメリットは…
- 今までの色と変わり、外観がぼんやりする
- 既存の配色に合わなくなる場合がある
- 塗料の劣化がやや早い
以上を踏まえて、グレーの屋根にする時の実例などの話に移ります。
グレーの屋根が流行って来た背景
先ほど例に出した遮熱塗料のJIS規格では、黒い屋根等の今までと同じ色を塗ることも前提にしています。
しかし今後は、新築時から黒でなくグレーの屋根も増えて来るでしょう。
高気密・高断熱で省エネ住宅には、上記遮熱グラッサのような屋根でなければコンセプトに反するからです。
下記の画像は2013年のものですが、新築でグレーの屋根が葺いてあったのです。
実はこの屋根を見て私も「遮熱塗料を塗るならグレーにするべき」と思い立ったわけです。
(無印良品はさすがに目の付け所が違っていたんですね)
新築を売る時にも暑さ対策で初めから遮熱塗料の屋根がグレーで葺いてあれば、塗り替えの時に黒く戻すと暑くなってしまいます。
2020年現在では既にグレーの屋根で建っていて、それほど真新しくない(数年経っている)家も珍しくなくなってきました。
そんな家が塗り替える時には、もちろん遮熱塗料のグレーで塗るでしょう。
そうやって今後は少しずつ確実にグレーの屋根が増えて行きます。
現場周辺の家を屋根の上から見ると、グレーの屋根で建った建て売り住宅があちこちで見られます。
特に遮熱塗料の効果が必要なお家のパターンは?
遮熱塗料や断熱塗料は、ついつい誇大広告になりがちです。
ですから、あまり効果を大きく言いたくは無いのですが、グレー色で塗り始めてからお客様からの感想が間違いなく変わり始めました。
特に、2階がリビングで吹き抜けのあるお家では、「涼しくなった!!」との感想を頂きます。
確かに、そもそも遮熱塗料を塗ると涼しくなる効果が期待できるこのタイプのお家では、効果がより期待できると言えます。2階がリビングで吹き抜けがあると解放感があって素敵です。
ただ・・・皆さん「暑い!」「エアコンが効かない!」と困っています。
遮熱塗料の効果が出やすい家については下記記事で詳しく解説しています
今後地球温暖化が止まらなそうな事を考えると、いずれ日本の屋根はグレーの遮熱塗装ばかりになる時代が来ると思います。
5・遮熱塗料のグレーの具体例
グレーの遮熱塗料では、エスケー化研のクールタイト・クールタイトSiの色見本の中から【CLR-106:グレー】という色をよく塗ります。
実際に塗ってみると以下の事例のようにに見えます。
遮熱塗料をグレーで塗った事例
屋根の淵だけは下からも見えますが、ここも屋根と同じグレーになります
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事では下記の点についてまとめてみました。
- 遮熱塗料の効果をバランスよく効果的に得るにはグレーで塗るのが良い
- グレーの屋根に違和感を感じる場合は色の好みを優先し、遮熱の効果は諦める
- グレーで実際に塗ってみても、意外と気にならなかったり違和感は無い
- 2階にリビングがあるお家だと、かなり劇的に効果がある
この記事の内容が腑に落ちて早めに今の悩みが解決すると嬉しいです。
興味がありましたら、下記の記事も読んで頂けると有りがたいです。