遮熱塗料で全ての家が涼しくなる…わけでは無い!?
遮熱塗料のメーカーカタログには、必ず以下のように書いてあります。
ここで注意したいポイントは…涼しくなるのは「室内温度」ではなく、あくまでも「屋根の表面温度」という事です。
「遮熱塗料を塗ると涼しくなるんだって♪」と凄く期待してしまう前に、まず考えなくてはいけない事があります。
「屋根の表面温度が下がれば室内温度も下がる」というのは理屈では正しそうですが、必ずしも全ての家で劇的に涼しくなる訳では無いからです。
なぜかと言えば、家のタイプによって…
- 遮熱塗料を塗ると涼しくなりやすい家
- 遮熱塗料を塗っても効果を感じにくい家
があるからです。
この記事では、遮熱塗料で効果を得やすい4つの家のタイプを解説していきます。
遮熱塗料で効果が得やすい家の4つのパターン
屋根に遮熱塗料を塗ると、他の家で遮熱塗料を塗るよりも効果が出やすい家、というのは裏を返せば…
そんな、遮熱塗料を塗って効果が得やすい家とはどんな家なのでしょうか?
その4つのパターンをお伝えします。
- 屋根材が金属の家
- 吹き抜け天井
- 3階建て
- 2階にリビング
ではこの4つを順番に解説をしていきます。
遮熱塗料の効果を測る3つの要素
ここでは主な3種類の屋根材を比較してみます。
屋根の遮熱性能を考える場合の指標を適切に考える場合には以下の要素について検討しなければなりません。
- 屋根の表温度
- 屋根の通気層
- 屋根材の熱伝導率
これらの卓上の理論と、現実にある住宅の設計や建材を考慮して今回の4つのパターンを導き出してあります。
① 屋根材が金属の家は遮熱塗料の効果が出やすい
金属屋根の種類
戸建住宅の場合の多くはスレート瓦が屋根材として使われていますが、金属屋根で遮熱塗料を塗る場合は 、トタンかガルバリウム鋼板の屋根になります。
※ステンレスやアルミ・銅板の屋根も有りますが、それらは基本的に塗装はしません。
金属屋根だと他の屋根材よりも熱くなる理由…
金属の特性は熱伝導率、断熱性を測る「1つの目安」に熱伝導率があり、この数値により熱の伝わりやすさが分かります。
瓦やいわゆるスレートとは違い金属の熱伝導率が高いのが分かります。
屋根の素材 | 熱伝導率 (W/m.K) |
---|---|
金属屋根(ガルバリウム鋼板) | 45 |
瓦 | 1 |
薄型化粧スレート | 1.2 |
分類 | 屋根の素材 | 熱伝導率 (W/m.K) |
---|---|---|
金属 | 鋼板 ガルバリウム鋼板 アルミニウム 銅 ステンレス鋼 | 45~55 45 210 370 15 |
瓦など | 瓦 レンガ しっくい | 1 0.64 0.74 |
スレートなど | 薄型化粧スレート スレート波板 アスファルトシングル | 1.2 0.35 0.11 |
建材 | モルタル サイディング外壁 ケイ酸カルシウム板 タイル コンクリート | 1.5 0.21~0.26 0.15 1.3 1.4 |
その他 | 空気 土・ガラス ダイヤモンド 水 木材 せっこうボード | 0.0241 1 1000~2000 0.6 0.2 0.22 |
上の表から各屋根材と比較した金属屋根の特徴が以下のように分かります。
- 金属は「熱伝導率」が他の屋根材よりとても良い
- 金属屋根は薄いので、表面温度がすぐ裏に伝わる
ですから、金属屋根の真下の部屋は太陽光が当たると同時に室内温度が上がります。
他の屋根材だと熱が伝わるのにタイムラグがあり、すぐには室内温度は上がりません。
そしてそんな太陽光の影響を受けやすい金属屋根だからこそ、遮熱塗料の効き目が出ます。
太陽光を反射する事で屋根の表面温度の上昇を抑えて、室内温度の上昇も抑える事が出来るのです。
屋根が瓦やスレートの場合では遮熱塗料の効果は出にくいが…
瓦やスレート屋根は熱伝導率は低く、素材の厚みもあります。
金属板とは違い、屋根の表面温度が室内へ伝わる速度はだいぶ遅くなります。
また、瓦は下地との隙間があり通気層があります。
スレートは2枚で1組になっているため重ね目で通気します。
どちらも金属屋根よりは暑くなりにくい素材と構造なのです。
だからと言って遮熱塗料を塗らないかと言うと…瓦やスレート屋根の場合でも、実際には遮熱塗料で塗る事がほとんどです。
※ただ、金属屋根よりも室内に熱を伝えにくい素材なので、劇的な遮熱塗料の効果は体感し辛くなります。
天井が吹き抜けている家は遮熱塗料の効果が出やすい
天井が吹き抜けている家も、夏の暑さには悩まされてしまいます。
部屋全体の容積が増え、熱い空気を溜めてしまうので冷房が効かない事も要因でしょう。
特に吹き抜けた天井が平らでは無く斜めになっていると、遮熱塗料が効果を発揮します。
天井が吹き抜けていると熱くなる理由
天井が吹き抜けていると熱くなる理由は、下記の2つの要因があります。
- 斜め天井には小屋裏空間が無いので、小屋裏換気が十分出来ない
- 屋根の裏側に断熱材があっても、屋根の熱がダイレクトに室内に入る
- 天井の屋根は、ガルバリウム鋼板が多い
このことから、屋根材の裏側まで伝わった熱が【速く・熱いまま】室内天井面に伝わります。
天井が吹き抜けているお部屋にロフトがあれば、階段を1段上る度に気温も上がるのが体感できるでしょう。
排気・通気装置の有無もポイント
室内が吹き抜けになっていると、このような屋根からの熱を断熱したり排熱したりする事が出来ません。
屋根の表面温度がほとんどダイレクトに近い状態で室内に入ってしまうのです。
小屋裏空間があると、遮熱塗料の効果は出にくいが…
屋根裏(小屋裏)に空間があるという事は、そこに「空気の層」があるという事です。
この割合で計算すると空気は金属の1/3500しか熱を伝えない事になります。
つまり、部屋に天井があるのと無いのでは、すごい違いがあるのです。
断熱材の有無
また、当然ですが断熱材の存在を無視する訳には行きません。
断熱材は、断熱するだけの為にあるものですから、断熱材がきちんと役割を果たせば遮熱塗料の出る幕は無い筈ですね。
今の一般住宅には屋根・外壁の内側に断熱材があるので、ほとんどの熱はここで止まってしまう、と言う理屈になります。
3階建てのお家は遮熱塗料の効果が出やすい
上記「吹き抜け」の理由と複合的になりますが、木造3階建が一般的になると遮熱塗料の需要も必然的に増えます。
3階建ての最上階は、不思議と2階建の最上階より暑いように感じるからです。
特に壁が斜めでその外が屋根になっている場合には、遮熱塗料が効果を発揮します。
3階建ての最上階が熱くなる理由
- 3階建の斜め壁の部分には、特に日差しが良く当たる場合が多い
- 3階建の場合屋根の軒先の出幅が無い場合が多く、外壁にも全て太陽光が当たってしまう
- 3階建の最上階も小屋裏空間が無く断熱材があっても小屋裏換気が十分出来ない場合が多い
- 3階建の最上階は日が良く当たり、天井が低い場合が多く、暑さが部屋にすぐこもる
これらのことから、3階建の最上階の部屋は2階建より暑くなる傾向があります。
3階は子供部屋という場合が多いので本人たちにも親にも、その暑さが分からないかもしれません。
ただし、暑くなる条件を考えると、3階建ての最上階は確実に遮熱塗料が効果を発揮すると言えます。
2階にリビングがある家(二世帯住宅など)は遮熱塗料の効果が出やすい
2階や3階にリビングがある場合、家族が集まる部屋が常に暑いことになります。
家族が集まるためのリビングが暑くて居づらい場合は遮熱塗料を試してみる価値があると思います。
2階にリビングがある(2世帯住宅)が熱くなる理由
- 2階のリビングは窓の開口部が多く日差しが良く当たり、そもそも暑い場合が多い
- 二世帯住宅の場合で2階の世帯は全室最上階なので、涼しい部屋がどこにも無い
- 2階にリビングには吹き抜け天井になっている場合が多い
- 2階のリビングには天窓が付いていて、冬は良いが夏は暑い
特に2世帯住宅の場合には、本当に逃げ場が無く0.5℃でも下がれば省エネにも繋がりますので、遮熱塗料はコストパフォーマンスの上でもお得な選択と言えます。
遮熱塗料の効果が出にくい家とは?
遮熱塗料の効果が出にくい家は、上記の「暑くなりやすいポイント」が無い造りになっています。
日本瓦やセメント瓦・モニエル瓦など厚型瓦の屋根
天井裏の小屋裏空間や屋根裏収納がある
平屋・2階建て
リビング・寝室が1階(最上階を使っていない)
太陽光パネル
また、屋根に太陽光パネルが載っている家では、当然ですが遮熱塗料の効果は期待できません。
まとめ(遮熱塗料が効果を発揮しやすい家)
簡単にまとめると、遮熱塗料が効果を発揮しやすい家とは「暑くなりやすい家」です。
- 金属の屋根
- 吹き抜け天井
- 3階建て
- 2階にリビング
これらの「暑くなってしまいやすい条件」を少しでも緩和したい場合には、遮熱塗料の出番と言えるでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
この記事の内容が腑に落ちて早めに今の悩みが解決すると嬉しいです。
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